好業績の基礎にある企業文化
維持するのは簡単ではない

トヨタの“求心力”を支える豊田章男社長
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 トヨタ自動車は、2015年3月期の連結営業利益が約2兆7000億円と最高益になる見通しを発表した。トヨタの高業績の背景には、円安が進んだことに加えて、ドル箱の北米市場での自動車販売が堅調に推移していることがある。

 デジタル革命に乗り遅れたわが国の家電各社の苦戦が続いている一方、自動車産業は世界市場で高いポジションを維持している。中でもトヨタは世界最高峰の自動車メーカーとして、わが国経済を支える大黒柱としての役割を果たしている。

 同社の好業績は、ハイブリッド等の高い技術力を基礎に、強力な販売力・堅固な財務体質によって維持されている。今後も新たなイノベーションによるさらなる飛躍を期待したい。

 トヨタの特徴の一つに、創業者である豊田家を中心とする、組織全体のしっかりした求心力がある。それが、質素と倹約を旨とする企業文化を、一種のDNAとして社内に定着させる要素になっているとの指摘が多い。

 確かに、高水準の生産技術や、組織全体の改善に取り組む企業文化を短期的につくることはそれほど難しくはないかもしれない。しかし、それを長い期間にわたって持続することは、口で言うほど簡単なことではない。

 それを可能にしている要素の一つに、創業者の系譜を継ぐ豊田家の存在がありそうだ。いわゆる雇われ経営者が、在任期間中の業績に囚われるあまり、短期的な収益性に目が行ってしまうのとはやや状況が異なる。

 豊田家が醸成する“危機感”や“改善”への意識、さらには“質素”と“倹約”の精神がトヨタ全社に染み込んでいるからこそ、その企業文化が風化することなく受け継がれてきたのかもしれない。