頑張ることは汗を多くかくことではない

 みなさんが仕事を頑張った、と感じるのはどんな時でしょうか。たくさんの事務処理を行ったとき、集中して雑務をこなしたとき、たくさん汗をかいたとき、様々なシーンが思い浮かぶかも知れません。

 私も入社したばかりの新人の時は、車の修理をたくさんこなして汗をかいたりすると充実感を感じていました。しかし、「今日も頑張ったなぁ」と満足しながらタバコをふかしていると、先輩からすぐに指摘されます。「お前、汗をかいて満足しているようじゃダメだぞ」と。

 トヨタグループでは、「汗をかくこと」と「頑張ること」はイコールではありませんでした。むしろ逆で、「いかに汗をかかずに同じ結果を出せるか」ということが重視されていたのです。いわゆる「デキる先輩」は常に、涼しい顔で仕事をしながら結果を残していました。しかも時間を重ねるごとに、その“涼しさ”が増していったのは印象的でした。

時間は動作の影

「いかに汗をかかずに同じ結果を出せるか」を考えるうえで重要だったのが、「時間」のとらえ方です。「汗をかかずに」ということは、「時間をかけずに」とも言いかえられます。ですから、時間をかけなくて済む方法はないかということを常に現場では考えていました。

 そのうえで参考になったのは、昔のトヨタの方が仰った「時間は動作の影」という言葉です。要は、無駄な動作は無駄な時間を生むし、動作が減れば時間をかけなくて済む、ということ。ですから、いかに無駄な動作を減らすかを意識して仕事をしていました。

 実際、メカニックとして整備をしている時も、「どの導線で歩くか」「工具箱に工具を取りに行ったときに何を手にするか」「ついでに何かを持ってくるか」など、常に頭をフル回転させながら作業していました。

 無駄な動作を少しでも減らせれば、時間を創出することができますし、自分が疲れなくて済みます。それでいて、今までと同じ結果を出すことができれば、そこではじめて「頑張っている人」と言われるのでした。この考え方は、惰性で残業ばかりしているような人にぜひ聞かせてあげたいものです。