日本のゴルフ場が「2015年危機」に直面している。少子高齢化やゴルフ人口の減少により、ゴルファーに対するゴルフ場の数が、今年を境に供給過多に転じるのだ。座して死を待つか、はたまた打って出るかは、ゴルフ場経営者の共通の課題である。
その一方で、ゴルフにもっと積極的な意味合いを持たせる動きも活発化している。観光立国の一環としてスポーツツーリズムを本格化させ、ゴルフを観光と融合させようという活動だ。
3月、北海道のゴルフ場を観光資源として外国人観光客の増加を図ろうと、北海道ゴルフ観光協会(発足は2010年)がキックオフした。6月には、都内で日本ゴルフツーリズム推進協会が立ち上がった。「ゴルフツーリズム」が日本の観光産業における新たなキーワードになりつつある。
しかし、日本に2400ヵ所にものぼるゴルフ場があることは、海外においてほとんど知られていない。政策による締め付けでゴルフ環境が逆風下にある中国では、海外ゴルフ熱が高まっており、日本へのシフトが始まるのは時間の問題だ。それだけに、今後はいかにして海外に向けて情報を発信するかがゴルフ場経営のカギとなる。
こうしたなかで、7月10日の伊勢新聞に「ゴルフで外国人誘客を――」とする見出しが躍った。三重県がゴルフツーリズムに特化した観光誘客を宣言したのである。県内にある約80ヵ所のゴルフ場をいかにして観光資源にするか、三重県ではその取り組みが始まった。「伊勢志摩サミット」に絡め、欧米のゴルフプレー客を取り込む思惑も動く。
言葉の壁や国民性の違いなど
受け入れに躊躇するゴルフ場側
三重県はゴルフツーリズムを施策として打ち出すに当たり、県内のゴルフ場にヒアリングを行った。顕著だったのが「受け入れ体制」を問題に掲げるゴルフ場の存在だ。国や自治体の期待に対し、「理屈はわかるが実際は難しい」というのがゴルフ場側の率直な反応である。
壁は外国語人材の不足である。外国人客の接待という会話能力はもとより、実際プレーをしてもらうには、コース・クラブ内の表示を多言語化する必要がある。さらに、日本独特のプレースタイルを理解してもらうための、多言語の専門用語による説明も必要になる。こうした「多言語インフラ」はホテルなど宿泊業では進んでいても、ゴルフ場ではまだまだというのが現状なのだ。
三重県の海外誘客課は「ゴルフ場側は、これらを含めて『受け入れ体制』と認識しており、『すぐには対応できないのでインバウンドには参加できない』とする反応も目立った」とコメントする。
また、ゴルフ場経営は会員の出資により成り立つところが多く、そもそも不特定多数のビジターを相手にするという性格を持たない。そのため、海外からの受け入れについては「会員が納得するかどうか」が大きなハードルになる。同課も「会員の理解がなければ表立った取り組みができない、ゴルフツーリズムにはそんな縛りが存在する」と話す。