6月、上海に在住する現地貿易会社日本法人の役員からこんな画像が送られてきた。上海のゴルフ場に掲げられた一枚の看板を撮影したものである。

Photo by Yukio Kubo

「国家のゴルフ場に対する政策的調整を受け、当倶楽部は6月22日から暫く営業を停止します。ご不便をおかけ致しますがご了解ください」――

 写真のゴルフ場は「上海国際ゴルフカントリークラブ」。バブル崩壊とともに破綻した青木建設が1990年代初頭に開発した、当地きっての名門コースだ。また、800会員中日本法人は600会員と、現地の日本人にも馴染み深いゴルフ場のひとつである。

 地元メディアによれば、このゴルフ場を管轄する青浦区環境局が「上海市の飲用水の水源に立地する」とし、立ち退き命令を出したという。

 同役員は別のゴルフ場に向かったが、シンガポール資本の「上海太陽島ゴルフクラブ」も、台湾資本の「上海東方ゴルフクラブ」も同じような状況だったという。表向き「暫定的な営業停止」としているが、事実上の閉鎖である。

 筆者も電話取材を試みたが、上海太陽島は「営業停止状態がいつまで続くか自分たちにもわからない」と言い、上海国際に至ってはすでにスタッフも不在だった。

 北京でも続々とゴルフ場が閉鎖に追い込まれている。かつて北京に在住していた日本人N氏は、「私のホームコースだった十三陵にある『北京国際ゴルフクラブ』も、政府の手でフェアウェイが植樹されてしまった」と無念を訴える。

 このゴルフクラブは1986年に中日合資でスタートした、中国でも数少ない歴史あるコースだ。同年の開業式には全国人民代表大会常務委員長だった万里氏も出席したと言われている。

 中国全土には約660のゴルフコースがある。だが、そのすべてのゴルフ場がクローズになったわけではない。立ち込める不穏な空気に、ゴルファーの間では「ライセンスの有無か」「外資系への集中砲火では」との憶測も飛んだ。