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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

企業の中の陸軍と海軍、グローバル市場での敗退は陸軍偏重が原因か

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第29回】 2010年3月25日
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 海外留学生・海外勤務者の中には賢い若者も少なからずいた。当地では日本社会・企業風土を威勢よく批判していた人が、帰国すると何も経験談を話さずに「陸軍」に成りすますのである。筆者がそういう人たちに帰国前に「帰国したらそういう話をできるか」と問うと、「したくありません」という。自分が変革の捨石になるよりも、迎合して出世する道を選ぶのである。

 日本の大企業の多くは、異物を排除し社員同質化の雰囲気を醸成することで「陸軍」の牙城を作っていった。若い世代はこうした雰囲気を敏感に感じ取ったのだろうか、海外勤務を望まない人が増えているという。一生日本で過ごし、一生同じ企業で定年まで働きたいと願う若い世代が増えて来ているのだそうだ。こういう人たちが増えてくると、本人はハッピーでも会社としては身動きが取れなくなる。

躍進目覚しい韓国企業には
「陸軍」的な同質文化は無い

 日本企業を取り巻く環境は年々厳しくなってきている。韓国のサムスン、LG、現代自動車、ポスコが、日本企業の不振を尻目にグローバルな事業展開で成功してきている。サムスンの時価総額は既に日本のエレクトロニクス企業総体の時価総額より大きい。現代自動車も米国市場で、トヨタが苦戦するのを尻目に着実にシェアを伸ばしている。韓国企業の目覚しい躍進は北米市場でも目に付く現象である。

 なぜか? 韓国企業は日本企業と正反対のことをやっている。彼らは海外・国内を問わず優秀な人材を採用し、実績本位で評価する。企業の買収・売却にも積極的である。これをトップダウンで遂行する、厳しい経営である。日本企業のように「陸軍」文化に同質化させる意識はない。企業文化はむしろ「海軍」に近い。

 サムスンが良い例である。海外の大学院留学組を数多くスカウトし、トコトン仕事をさせる。海外勤務者を突然帰国させて国内営業の責任者にすることもある。その逆もある。内外の垣根を取り外している。海外経験のない社員にはTOEIC(英語能力検定試験)の点数を昇進条件に入れて、いつでも海外に飛び出させるように教育している。外国人でも同化できるような職場作りを心がけている。

 韓国企業を競争の対抗馬と見ているうちはまだマシだ。近い将来、中国企業とインド企業が台頭してきたらもっと恐ろしい事態が襲ってくる。博士号の取得者が米国で毎年数千人規模で生まれているのだ。米国で理工系の博士号を持った人材が帰国して、自国企業・自国研究機関で働きだしたらどうなるか。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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