3月19日、政府は、登録型派遣や製造業務派遣の原則禁止を柱とする労働者派遣法改正案を閣議決定した。本案は今国会で成立する見通しだ。これによって1986年の施行以降、規制が緩和されてきた派遣法が規制強化へと向かう。だが、規制強化対象の曖昧さや労働者保護の視点の欠如から、“骨抜き”との見方が強い。

 3月12日、派遣会社の業界団体である日本人材派遣協会の理事長・副理事長が揃って辞任するひと幕があった。理事長の本原仁志・スタッフサービス社長と副理事長の桑原加鶴子・ヒューマンリソシア社長の2人である。

 事の発端は、3月1日に、厚生労働省が、スタッフサービス、ヒューマンリソシアに、ヒューマンステージを加えた3社に対して、労働者派遣法に基づく業務改善命令を出したことだ。これらの3社は、派遣期間に1~3年の制限がある業務を、期間制限のない専門26業務の一つである「事務用機器操作」などと称して、労働者を派遣していた。こうした“偽装”を当局に指摘され、業界団体のツートップが責任を取ったかたちだ。

 3月19日に派遣法改正案が閣議決定される寸前に、今まで黙認されてきた“偽装”が白日の下にさらされた。業界大手を狙い撃ちしたような厚労省の手法に対し、「現行派遣法の厳格運用を印象づけることで、それをマイナーチェンジさせた改正派遣法の正当化をアピールしたのではないか──」(ある人材派遣会社社長)と、業界では憶測を呼んでいる。

 では、今回の改正案のポイントはどこにあるのか。

(1)仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ、登録型派遣の原則禁止
(2)製造業務派遣の原則禁止
(3)日雇い派遣の原則禁止
(4)派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先労働者との均衡待遇
(5)派遣会社によるマージン率の公開(派遣労働者に、1人当たりの派遣金額を明示)
(6)直接雇用みなし制度の導入(違法派遣が認められた場合には、派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだものと見なす)

 また、改正派遣法の正式名称には、「派遣労働者の保護」という文言が新たに加えられた。労働者派遣事業を取り締まる「事業者規制法」に加えて、派遣労働者を個人単位で守る「保護法」の性格を色濃くしたいがためだ。上記の6点について規制を強化し、労働者保護の目的を鮮明にしたはずだった。