不安高まるなかでの米国利上げ
状況は1970年以前に類似

米国の利上げに対する市場の不安は強いが…。写真はニューヨーク証券取引所

 内外の市場は中国経済への不安から大揺れだ。足元のような世界の株式市場の変動が続く中では米国の利上げは困難だ。それでも、みずほ総合研究所が抱く基本シナリオは、米国の国内要因から見れば利上げ環境が整ってきたとするものだ。

 ただし、世界経済は米国一国だけに過度な期待が集中するという米国機関車論の脆弱性を帯びるだけに、同国の利上げに伴う変動、具体的には米国長期金利急上昇、米株への不安は根強い。同時に、海外経済、なかでも新興国での不安は一層高まっている。

 以上のような、不安定さを抱えるなかで、米国の利上げは従来と異なり緩やかなものとならざるをえないだろう。筆者はストーリーラインとして、今回の利上げは市場参加者がこれまで体験したことがないものとなるとし、戦後の利上げ局面のなかでも大半の市場参加者が未体験の1970年までの状況に類似性が強いとしてきた。

図表1は、1970年以前とそれ以降に分けた米国FRBの利上げ幅・長期金利上昇幅・株価変動率を示す。1970年までの利上げ幅が1.5%以下であるのに対し、70年代以降は4%近い水準である。長期金利の上昇幅は70年より前は0.6%程度だが、70年以降は1.5%程度と倍以上である。ダウ平均株価は70年までは20%近く上昇したのに対し、70年以降はほとんど上昇がない状態にある。

(注)政策金利:1982年9月以前は公定歩合、1982年10月以降はFF目標金利を使用。利上げ前水準から利上げ後の水準、債券利回り・株価:利上げ開始月の平均値と 利上げ終了月の平均値の差分
(資料)Bloomberg、FRBより、みずほ総合研究所作成