企業の分配の優先順位が
変わってきた

――これからも物価は上昇基調なのでしょうか?

 現状は「いい物価上昇」と「悪い物価上昇」が混在している感じです。賃金が上がって、その結果、企業がモノの価格を上げるのは「いい物価上昇」ですが、一方でコストの上昇に伴う物価上昇は「悪い物価上昇」です。

 また、賃金が上がっただけでなく、アベノミクスによって家計の金融資産は1500兆円から1700兆円と、200兆円も増えました。これも物価上昇の後押しになります。ただ、投資はした人にだけ恩恵がありますから、万遍なく恩恵が行っているわけではない。たとえば株式投資をしている世帯は全体の1割強。それ以外の9割の世帯の中には「収入が増える以上に、物価が上がって行く」と感じる世帯もあるでしょう。

――ということは、物価が上がっている以上、賃金が上がったとしても、実質賃金はさほど急上昇することはない、とも言えますね

 そうです。日本の潜在成長率は0%台半ばといわれていますから、実質賃金もせいぜい同程度の上昇率が御の字なのではないかと思っています。

 もう一つ、最近の企業を見ていて思うのですが、残念ながら企業の経済活動の中で、「人」の優先順位が下がっているのではないでしょうか。ひと昔前は、「人(従業員)」「モノ(設備投資)」「カネ(資本)」のうち、「人」が最優先でしたから、儲けの優先分配先は従業員の給料でした。しかし現在、グローバル経営において、もっとも重要度が高いのは、M&Aなど「カネ」の部分です。

 つまり昔は100儲かったら70が人件費に回っていたのに、今は50くらいで、その代わりにどこに行くのかというと、内部留保を貯めてM&Aに備えるとか、株価を上げるために配当に回すのでしょう。

 企業が株主に重きを置いている時代なのですから、給料が増えることを期待するよりは、投資をしたらいいとも言えます。

――日本人の多くは、いまだに元本割れリスクが好きではないし、相場的にも買いやすい時期ではない気もします。

 先日、発売された元本保証の新株は、すごい応募率でした。やはり日本人は元本保証好きなのだと再認識させられる出来事でした。しかし、これ以外にも元本保証部分がある金融商品もあれば、プロが代わりに運用をしてくれる商品もたくさんある。怖がらずに、まずは勉強をしてみるべきではないでしょうか。

 日経平均のバリュエーションを考えると、今年の年末に2万1000円くらいでもまったく不思議ではありません。「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」「共済年金」「かんぽ生命保険」「ゆうちょ銀行」、そして「日銀」のいわゆる“5頭のクジラ”も買い支えています。“5頭のクジラ”の買いは、来年前半にも終わるかとは思いますが、それでも当面は力強い存在です。