仙台で開いている「佐高信政治塾」で対談してもらうため、鈴木宗男と一緒に東北新幹線に乗ったのは2014年秋だった。東京駅で乗り込むとすぐ、鈴木はチョコボールを出し、私にも勧める。
「私たちの子どものころはチョコレートやバナナは貴重品でしたよね」と言ってである。
一般的には鈴木はコワイ人だと思われている。あるいはダーティな人だとも……。
しかし、鈴木がいわゆる“国策捜査”でネライ撃ちされたことは、猪瀬直樹や渡辺喜美の事件と比較すれば、よくわかる。
『俳句界』9月号の「佐高信の甘口でコンニチハ!」という対談で、鈴木は次のように憤慨する。
「知事選挙に出る人間が、後の生活が心配だからお金借りましたなんてね、甘いですよね。鈴木宗男が領収書をきった4、50万の金で捕まえた検察がですね、5,000万円なんて大変な額を罰金刑ですませるなんて矛盾だし、検察が正義だというなら、何をもって正義というのだという気がしますよ」
猪瀬はやはり逮捕しなければおかしいし、8億円を受け取った渡辺喜美の件も表沙汰になった以上、事件にしなければおかしい。
猪瀬も渡辺も安倍晋三に近いから不問に付され、鈴木は当時首相だった小泉純一郎と官房長官の福田康夫に狙われたから捕まったとしか思えなくなるのである。
「メディアも権力の掌で動いている」
あの時、検察はガンに冒された鈴木の女性秘書まで逮捕した。
「国家権力はここまでやるのか。これではケンカできない。検察の言うことを認めて外に出て戦線を立て直すか」
こう考えた鈴木に、検察は、「鈴木先生、バッジを外して、政治家を辞めなさい」と“悪魔のささやき”を送ってきた。
それで鈴木は一度それに乗ろうとする。
その時、鈴木夫人は鈴木を叱り、こんな手紙を弁護士に託した。