丸山 現在のマジョリティの人材紹介は、私も消えると思います。データベースの中から最適なマッチングを見つけ出す能力は、人間はコンピューターにかないません。すでに当社も含め、一定の規模以上の人材紹介会社ではコンピューターでマッチングするようになっています。そうなると自分たちが企業と候補者の間に介在する価値がどこにあるかを見極め、それを強化できるかが重要になってくる。

秋山 AIはゴールやフレームが明確で、データをもとに経験則が貯まってくるときに力を発揮します。候補者の過去の実績と基礎能力、仕事に求めるスキル、性格(思考様式、区行動様式)、会社の組織文化といったデータが残せるようになり、マッチングの成功・不成功が蓄積され利用できるようになれば、「この人はこの会社のこの仕事には絶対に向いてない」と明確に分かるようにもなるでしょう。

機械に仕事を奪われないために今からやるべきこと「普通のコンサルタントにはできない、熟練のキャリアコンサルタントにだけできることがある」(丸山さん)

丸山 しかし入口がミスマッチでも、結果としてそれがよい方向に出ることがありますよね。それは熟練のキャリアコンサルタントにだけできて、普通のコンサルタントにはできないことでもあります。たとえば「ご依頼いただいたオーダーとはまったく違うんですが、おそらく社長はこの候補者をものすごく気に入ると思います」といった提案ができ、「あなたがそこまで言うならお会いしましょう」と承諾してもらえるのは、非常に多くの経験に基づく直感とクライアントとの深い信頼関係を持っている熟練したコンサルタントだけです。で、実際に会ってもらうと「彼はとてもいいね。いま給料いくらもらっているの?」と話が決まっていく。そうやって入社し、成功している人はいっぱいいますよ。こういうマッチングはコンピューターでは難しい。

秋山 長年にわたって積み上げた経験値から生まれる第六感や洞察力が重要、ということですね。AIの発達で一番困るのは、「このパターンならこうする」というゆるぎない知識体系を使ってアウトプットしている専門家です。要は医師や会計士などで、いま世の中では「生き残るには専門性が必要だ」と言われていますが、実際には、中途半端な専門家は淘汰されてしまう。生き残るのはAIに勝てるくらいの第六感や洞察力を持った本当の意味での専門家になるでしょう。

丸山 ただ、一方でAIによるマッチングに頼るようになればなるほど生身の経験ができず、そうした能力が身に付かなくなるジレンマがあります。

秋山 加えて、最近の時短や「効率的に仕事をする」働き方の潮流も、第六感や洞察力を身に付けるのを阻害します。自分のやりたいことを一生懸命考え抜いて取り組み、たくさんの成功と失敗の繰り返しの数が一番多かった人が一番になれるとは限りませんが、10番以内には入りますよね。でも徹底的に考え抜き試行錯誤するのではなく、効率的に仕事をするといった働き方だと、天才以外は第六感を身に付けるまでには至らないでしょう。時短と熟練をどう両立するかは本当に難しい問題です。一つの考え方としては、第六感を身に付けるような働き方を全員がする必要はない、という方向があります。

丸山 私はその考え方に賛成です。

秋山 ただ、効率的に作業するような仕事は将来、みんなAIに置き換えられてしまう危険性もあることには留意が必要ですが。