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めまぐるしく変わるITだからこそ
長期計画の策定が重要になる

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第48回】 2015年9月4日
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長期ITロードマップ≒都市計画

 長期ITロードマップは社会における都市計画に喩えることができるだろう。都市計画は、人口構成や交通量などに関する将来予測と、どんな都市にしたいかという理想像に基づいて、長期的な視点で描かれるものである。都市計画が欠如した社会では、交通渋滞やラッシュアワーなどの人的導線の停滞、安全性の低下、住環境の悪化、設備の補修・保全コストの増大、環境変化への柔軟性の欠如といった問題を引き起こすこととなる。

 このような状況は企業情報システムにもまさに当てはまる。全体構想や明確な設計思想がないままシステム構築を繰り返していくと、無計画に技術や製品が導入され、これに補修や機能追加などが積み重なり、継ぎはぎだらけのシステムが構築される。このような複雑化した構造のシステムでは、欲しいデータがすぐに見つからない、業務ごとに再入力が発生するために誤入力が増加するといった問題を引き起こす。

 また、多種多様な技術や製品が採用されているため、障害やセキュリティ侵害の原因となる脆弱な部分が散在することで信頼性が低下したり、性能や操作性が悪化したりする原因となる場合もある。結果として運用・保守に要するコストが増大し、要件の変化にすぐに対応できず、ビジネスの足かせとなる事態を招くこととなる。

ITロードマップ策定のアプローチ

 それでは、ITロードマップの策定プロセスを見てみよう。ITロードマップを作成するには、経営戦略やIT方針といったトップダウンからの視点と、現行システムの棚卸しや現状で見えている施策の整理といったボトムアップの視点の両方からの検討が有効である。すなわち、将来からと現在からの挟み撃ちのアプローチといえる(図3)

 特に、将来に向けて注力していこうとする事業、競争優位を目指して変革していこうとするビジネスモデルや業務形態などに対する経営方針は、長期的なIT施策を考えるうえで重要なインプットとなる。また、将来的に活用が見込まれる新規技術、技術における主流や標準の動向などは、企業ITの目指すべき姿を検討するうえで押さえておかなければならない視点である。

 一方、情報システムの構成要素であるハードウェアやソフトウェアには、アップグレード、リース切れ、資産償却、技術の陳腐化、サポート切れなど、買い替えや更新のタイミングが必ずあり、そのタイミングを逃すとまた何年も待たなければならなくなることがある。現行システムの棚卸しや、現状で見えているIT施策の整理を行うことにより、このようなタイミングを逃すことなく計画的な移行が可能となる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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