最高の学びを世界の果てまで届けたいという妄想

山口 その後、リクルートに移りました。受験サプリはリクルート内の新規事業コンテストから生まれたビジネスです。コンテストに出した当時に掲げたのが「子ども達に最高の学びを世界の果てまで届けよう」というコンセプトです。今でもそのビジョンは持ち続けています。

980円のオンライン予備校<br />「受験サプリ」を生んだ戦略とは?入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール准教授。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。1998年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(PhD.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタントプロフェッサー(助教授)に就任。2013年から現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。専門は経営戦略論および国際経営論。主な著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)がある。
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入山 すると、今は「受験サプリ」というコンテンツだけが注目を集めていますが、本当はもっと大きなことを考えられている?

山口 そうです。考えてみていただきたいのですが、小学校・中学校・高校の「英数国社理」みたいのは、典型的なローカルビジネスなんです。日本には日本の文科省のカリキュラムが存在して、日本の受験制度がある。フィリピンならフィリピンのカリキュラムとか受験制度があるわけです。したがって、教える先生もローカル、受ける側もローカルになるわけです。

入山 なるほど。

山口 一方で、哲学とか、宗教とか、世界全般で共通する教養コンテンツがありますよね。そういうものは、マイケル・サンデル氏とか、ムハマド・ユヌス氏とか、世界ナンバーワンの先生から学べるわけです。

 世界共通の国境を越えた教養コンテンツと、ローカル to ローカルの勉強用コンテンツのプラットフォームが併存して、その国の公共料金並みの金額で提供したら、いつか何億人の子供が使ってくれるんじゃないか……という世界を妄想しちゃったんですよね(笑)。

入山 素晴らしいですね。それは、いつぐらいに妄想したんですか。

山口 リクルートの新規事業コンテストに参加していた4年前です。その第一歩として選んだのが高校生の大学受験だった、というだけなんです。当時、高校生向けの事業部にいたので、この分野には明るかったので。

入山 受験サプリは山口さんの大きなビジョンを実現するための、第一歩なんですね。

山口 新規事業コンテストでグランプリを取った後に、「その事業の名前をどうする」という議論になったんです。私は最初から、世界に向けたブランド名を付けたかったんですよ。例えば“Life is learning”とか、“Open Education”とか…。

 といいつつも、最初に準備できるコンテンツは、日本の高校生向けの大学受験用なわけです。「そこに、こんなでっかい名前掲げたってわかんないよ!」っていうのが他のメンバーからの意見で。

入山 では、今の「受験サプリ」という名称には結構忸怩たる思いが(笑)。

山口 「何でこの夢ある構想が、受験サプリってう名前になるんだよ、そんなこと言うなら降りるわ」って言ったら、当時の上司に怒られました(笑) お前大人げないこと言うなと。そこで、「確かに、まずはわかりやすい名前の方がいいかな」と考えて、納得したんです。