一方、30代前半の男性、林さんも「老後は日本へ」と筆者に話してくれた。林さんは1年間、日本の大学に留学したことがあるが、長期で住んだ経験はない。日本のアニメやアイドルが大好きで、筆者は彼からAKB48の魅力を何度も聞かされたことがある。童顔で、まだ学生っぽさが残っているような爽やかな青年だ。

 林さんは北京の有名大学でメディア学を専攻し、卒業後は出版社に勤務していた。現在は独立してある企業を立ち上げ、新規ビジネスに取り組んでいる。スポンサーを集め、従来は中国に存在しなかったビジネスに取り組んでいるのでストレスも大きいが、「充実しています。日本に留学していたときから温めていた事業。中国はリスクも大きいけれど、チャンスを掴めば、大成功できる可能性がたくさんある。今、この仕事に燃えています。ワクワクしますよ」と意気込んでいる。

30代の若者までもが……。
日本で飽きるほど読書をしたい

 仕事は早朝から夜遅くまで、打ち合わせや出張、営業など様々な業務が続く。中国のビジネスは日本以上のスピードで行われるので、まさに目が回るような毎日だが、林さんには1つの夢がある。驚くことに、それが年をとったら日本で暮らすという夢だ。

「具体的なことはまだ何も決めていません。でも、年を取ったときのことは以前から漠然と考えていたんですよね。故郷に住んでいた母が3年前に定年退職したんですが、なんと故郷を離れて引っ越しちゃったんです。故郷はあまりにも大気汚染がひどいからといって……。友人が1人もいない町にですよ!でも、驚くことに、母はそこにマンションを買って生活し始め、今では友だちをつくって、ヨガやダンス、習い事などを楽しんでいます。そんな勇気のある母の影響も、あるのかもしれません」

 林さんは中国の大学を卒業するとき、一時日本の大学院への進学を考えたことがあった。就職があまりよくない時代だったので、当時国内の大学院に進学する友人が多く、自分は日本に行くことを考えたのだが、結局断念した。大学院で勉強するだけの生活は性に合わないと思ったからで、日本で仕事をすることはあまり想像できなかった。離婚した母親に経済的な負担をかけたくなかったということもある。それよりも、日に日に発達する中国でメディアの仕事をするほうが面白いと思ったのだが、もともと静かに読書をしたり、何かをつきつめて学んだりすることは大好きだった。

「今はね、とにかくビジネスで成功し、ある程度お金を貯めたいんです。大金持ちになりたいとは思わない。でも、ゆとりのある生活をするには、多少のお金は必要。あらゆるビジネスの可能性が広がっている中国で50歳くらいまで頑張ったら、日本でのんびりと暮らしたい。毎日飽きるほど読書をしたいですね」