アップルの人気を最も上手に利用できたのは、実は首相官邸だったのではないか──。
アップルのスマートフォンの最新作「iPhone6s」の発売(9月25日)を前に、通信業界にはそんな皮肉とも受け取れる反応が広がっている。それもそのはず。アップルの追い風をさらったのが大手通信キャリアではなく、安倍晋三首相だったからだ。
「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題だ」
9月11日、首相官邸で開かれた「第15回経済財政諮問会議」の席上で、安倍首相の口からそんな発言が飛び出すと、高市早苗総務大臣に方策を取るよう指示を出した。
スマホなどの通信料金は、各家庭にのしかかっている分かりやすいインフラ費用に違いない。総務省の家計調査によれば平均利用料金は月額約7200円(2014年)と毎年増えており、いわば庶民のお財布を直撃しているように見える。そこを引き下げようというわけだ。
わずか2日前、いまや国民的人気を誇っているiPhoneの新商品発表で世間が沸いているタイミングだ。通常よりも多くの人たちの関心と共感を呼ぶと読んでいたに違いない。
さらに偶然なのか発言があった同じ日に、KDDIが月額1700円ぽっきりで電話がかけ放題になる新プラン「スーパーカケホ」を発表していたのだ。
これまで競合のNTTドコモが月額2700円の定額で、かけ放題となるという料金プランを発表していた。それを1000円安くしたプランは話題になり、同日夜にはソフトバンクが同じ月額1700円の「スマ放題ライト」を慌てて発表して追従した。
ドコモは未発表だが、「同じような価格プランを出さざるを得ません」(業界関係者)。