オランダは国策として
中高年男性社員の退場を促した

 話はオランダに戻る。出発点は高度成長期の日本と同じだったあの国が、なぜ世界に冠たるパートタイム大国になることができたのか?

 その一大要因はかつて「オランダ病」と呼ばれた構造不況だ。2度の石油危機を経て貿易立国のオランダは国際競争力を失い、社会保障負担の増大に耐えられなくなった。そこで1982年に「ワッセナー合意」が政労使の代表者間で結ばれ、三方一両損のごとき妥協が成立した。経営者が求める賃金抑制と、労働者が望む労働時間短縮、そして政府による減税が同時に進められることになったのだ。

 賃金抑制で大きな役割を果たしたのが、就労不能保険(WAO)だ。失業保険のようなものだが、最大限の8割支給を大半の人に認め、しかも無期限という運用がなされたため、当時のオランダ政府には耐えがたい負担だったろうが、これが結果的に、賃金の高い中高年男性をごっそり退場させることにつながった。今の仕事にしがみつくよりは、就労不能保険をもらうほうが得だったからだ。

 中高年男性が抜けた穴を埋めたのが女性パートタイマーだった――。ごく大ざっぱにいえば、そういう図式が成り立つ。

 元日未明の「朝まで生テレビ」で竹中平蔵氏が、「同一労働・同一賃金と言うんだったら、『正社員をなくしましょう』って、やっぱり、あなた、言わなきゃいけない」と発言したことが物議を醸したが、オランダの先例はこの点でもたいへん示唆に富んでいる。

 国策として特権的な正社員を引きずり下ろし、下方平準化に成功したのがオランダだ、といえなくもないからだ。

 日本の短時間正社員制度はまだ一部の企業が採り入れただけで、大多数の女性は非正規パートにとどまっている。そして雇用者の企業は、第3号被保険者制度を隠れ蓑に、社会保障費用負担を堂々と免れている。

 同一労働・同一賃金を日本でも真に実現するためには企業の努力だけでは不充分だ。「正社員をなくしましょう」という竹中平蔵氏の持論をオランダのように国策としてやるくらいの荒療治が、斜陽国家日本の再浮上には必要なのかもしれない。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R))