サッカーの女子ワールドカップで、なでしこジャパンの連覇はなりませんでした。しかし、国民の期待にたがわず、準決勝までヨーロッパの強豪を次々と破り、2大会連続で決勝の舞台に立ったこと自体がまず賞賛すべきことです。
振り返れば、なでしこが4年前に前回大会で優勝した頃から、日本の社会で「女性の力をもっと生かさなければいけない」という課題意識が強くなってきました。いまや総理大臣が重点政策に掲げて女性活躍の担当大臣を置くくらいですから、彼女たちが社会に与えたインパクトがいかに大きかったことだったか改めて感じます。そのことは中小企業の現場も例外ではありません。
人手不足、非正規雇用、経営者の意識
中小企業での女性活躍を阻む3つの問題点
私のクライアントでも8割以上が景気動向に左右されずに、成長軌道に乗っており、その多くで女性の管理職が活躍しています。経営者やリーダーから「明らかに女性の方が優秀。将来の目標やビジョンを持って真剣に仕事に取り組んでいる」といった意見が出るくらいです。
しかし、女性が活躍できる環境を整えようと考えても、大企業とは異なる、いや大企業よりも複雑な問題を抱えているのが中小企業です。特に指摘しておきたいことが3点あります。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。日本で随一の人事評価制度運用支援コンサルタント。日本社会を疲弊させた成果主義、結果主義的な人事制度に異論を唱え、10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。会社のビジョンを実現する人材育成を可能にした「ビジョン実現型人事評価制度®」を日本で初めて開発、独自の運用理論を確立した。代表著書に累計20刷のロングセラーを誇る『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!』(KADOKAWA/中経出版)などがある。日本人事経営研究室(株)HPはこちら。
まずは人手不足。結婚や出産というライフステージに直面し、職場を離れる女性社員のピンチヒッターを探そうにも、大企業が採用を増やしている昨今は、男女を問わず優秀な社員を新たに採用することが難しくなっています。
2点目は、女性は非正規雇用率が男性より高いことです。
女性の非正規雇用は増え続けており、2014年は1332万人。リーマンショックのあった2008年と比べて132万人も増加し、男性の倍以上です(14年は630万人)。このうち中小企業の場合は、大手ほど人件費を割けないので、雇用形態を非正規にして女性従業員の力に頼らざるを得ないところが多いのです。パートや派遣等の従業員で真面目に頑張っている方もいますが、会社への帰属意識は正社員の方ほど強いとは言えないのが普通です。雇用が流動化する時代にあって、環境も待遇も大手より厳しい中で求心力をどう高めていくか、中小企業の人材マネジメントに問われています。
そして3点目。これが実は私がもっとも深刻に思うところですが、中小企業の女性人材の活かし方は二極化しています。