実家に戻っても、ほとんど引きこもる生活が続いた。昼間、犬の散歩に出かけると、すぐに道端で「今日は、お休みなの?」と声をかけられる。子供の頃の自分を知っている近所の人たちの視線が気になり、日中、外を出歩くことができなくなった。

 夜、起きていて、夜明けとともに犬の散歩に出かけ、明るくなったら眠る。そんな昼夜逆転の生活。次第にネットを通じて、すべてのコミュニケーションをとるようになった。

 だんだんしゃべれなくなって、口が動かなくなる自分を感じた。外を歩くと、苦しい感じがした。喉を潤すために、ペットボトルの水分が手放せない。とてもではないけど、肉体労働は無理だった。自分の意識の中では、病人のような状態だった。

 しかし、病院へ行って、あれこれ聞かれるのも嫌だった。コンビニで買い物する時でさえ、「店員に笑われているのではないか」「自分の今の状態を知られているのではないか」と不安になった。

 この頃の小澤さんには、社会から拒絶されているような感覚があった。

収入だけでは得られない
やりがいや人間関係を重視

 ところが、ひょんなことから、今いるワーカーズコープでの仕事を紹介される。そして「雇う、雇われるという雇用関係ではなく、経営者のいない働き方を模索する」協同労働の考え方に感銘し、働いてみようという気になった。

 ワーカーズコープでは、病院の清掃から始まり、今ではこうした就労支援や子育て保育、公共サービスの運営なども手がける。当初は「1ヵ月でいいから、バイトで全国集会の準備の手伝いをしてくれ」と言われたのも、今振り返れば、良かったのかもしれない。そのときは、パソコンで文章を作るだけのつもりだったからだ。

 集会が終わって、「1ヵ月、やりきったな」という達成感を味わった。打ち上げでは、美味しい酒を飲んだ。その席で、「これからどうするんだ?」と、聞かれたが、先のことまでは考えていなかった。

「その弛んだ腹を引っこめるためにも、清掃現場で鍛え直してやるから、当分出てこい!」

 嫌だなと思った。体力に自信もない。少し考えた後、「無理です」と断った。

 その後2~3日の間、家で余韻に浸って、ふと思った。

「そろそろ仕事探さなきゃいけないな」