今回取り上げるのは、優柔不断で自信のない上司に対して、上司のその態度を厳しく糾弾してしまう部下の話です。自信のない上司に対して、自分のやりたいことなどを主張する場合には、自分に自信がある部下であればあるほど思わずトーンが強くなってしまうものかもしれません。しかし、それでは主張をうまく通すことはできません。では、一体なぜうまくいかないのでしょうか。ケースから考えていきましょう。
優柔不断な上司に対して
強引に決断を迫る部下
バイオテクノロジーの研究所に勤める坂口さん。彼は新製品の開発プロジェクトにおいて、新薬の効能を示す実験データが次々と出たことに気を良くし、予算を増額して、研究規模を拡大することが、会社のために最善と考えています。そこで、所長である渡辺さんにその提案と申請を願い出ることにしました。
(坂口さんが所長室に行き、分厚い研究資料をどーんと所長の机の上に置く)
坂口「見てください。これだけ貴重なデータが集まりました。ここまで実証データがそろったんですから、ここから先はどかんと、いきましょうよ!もうパイロットは終えて、本格研究の段階にいきたいと思います。所長、この決裁書に判を押してください。お願いします!」
渡辺「いや、そんなこと、急に言われても……。これ、僕、あの、その、つまり、目も通していないですし、私1人ではなかなか決めかねるというか、私の1番の専門分野では、そのぉ……、ないような気がして」
坂口「所長、判を押してくれるんですか? 押してくれないんですか? どっちなんですか」
渡辺「いやあ、その、つまり、そう性急に決断をですね、迫られてもですね、やはり専門家の意見も、私も相談したいと思うわけでしてね」
坂口「そんなことやってたら、うちの会社なんか、外資に買収されちゃいますよ」
渡辺「いやぁ、そんなことはないと思うけどねぇ」
坂口「はっきりしてくださいよ。だから渡辺所長は昼あんどんとか言われてるんです」