15億円の制裁金、追加リコール、そして問題の早期公表を求めた米販社元幹部のメール流出などなど、トヨタへの逆風はいっこうに止む気配がない。トヨタはひたすら米政府当局に対して恭順の姿勢を示すが、果たして思惑通り事態を沈静化できるのか。リコール騒動の震源地・米国からお伝えする。
(文/ポール・アイゼンスタイン)
まるで古代中国の水責めの拷問のようだ。一滴、また一滴……安全性をめぐる最新の問題点が少しずつ報じられ、米国の運輸当局とのやり取りが続く日々を、トヨタは何とか耐え忍んでいる。そして、4月の動きを見る限りでは、今回の危機はまだ終焉にはほど遠いようである。
トヨタは4月、米有力消費者情報誌「コンシューマー・レポート」に横転の危険性を指摘された高級スポーツタイプ多目的車(SUV)「レクサスGX460」(2010年モデル)について自主リコールを決めたばかりだが、今度は米道路交通安全局(NHTSA)が過去の小型クロスオーバー車の不具合についても迅速に行動しなかったのではないかと疑いの目を向けていることが分かった。
すでにNHTSAはトヨタに対して、アクセルペダルが戻らなくなる不具合についてのリコール措置が何ヶ月も遅れたとして約1640万ドル(約15億4000万円)の制裁金をトヨタに課す方針を発表しているが――トヨタはその後支払いに同意。しかし法令違反について否定――今回のNHTSAの告発は新たな制裁金へとつながる可能性もある。
この最新の問題は、人気のクロスオーバー車「ヴェンザ(Venza)」を巡る一件だ。この車種は去る1月27日、フロアマットがアクセルべダルにひっかかる可能性があるとして、増え続けるリコール対象車種のリストに加わった。問題の焦点となっているのは、カナダにおいてはその1ヶ月前に同車種のリコールに踏み切っていたという点である。
トヨタは、米国でのリコールが遅れたのは同車種の仕様が微妙に異なり、米国版の「ヴェンザ」も修理が必要かどうか確実でなかったためであると主張している。しかし、過去数ヶ月にわたリコール問題に関する新たな事実発覚が続いていただけに、トヨタの主張が真実だとしても、米国民にはなかなか伝わりにくいところがある。