ハイテクノロジーを集めたロボットが制御不能になり、地球滅亡の危機に瀕する。その時、人類は……。ハリウッドのSF超大作映画は、だいたい、こんなストーリーだ。ところで、最初からハイテクノロジーを放棄し、ロボットの「制御不能なさま」を楽しむイベントが人気を集めている。技術力の低い人限定のロボットコンテスト、その名も「ヘボコン」。一体、何を競うのか!? ヘボコン富山大会に潜入してみた。
「ヘボコンIN富山」は10月8日、富山市の中心商店街で開幕した文化庁メディア芸術祭富山展の一環として開かれた。第1回のヘボコンは昨年7月に都内で開催され、国内外合わせて、すでに40回以上続いている。また、米国やアジア、欧州など海外での開催は35回を数え、一大ムーブメントとなっているらしい。
試合はトーナメント形式で争う。ルールは、縦1メートル、横0.5メートルの板を試合場とし、倒れたり、外に出たりしたら負け。遠隔操作や自動操縦が可能な機能が付いたものは、「技術力が高すぎる」としてペナルティーがある。トーナメントを勝ち上がったロボットは優勝、準優勝として表彰を受けるが、最高位は観客から「ヘボさ」が認められた「技術力が最も低かった賞」。勝ち負けより、「ヘボさ」が重視される大会なのだ。
開会式を前に集合した16体のロボット、一見するとガラクタの山である。スナック菓子の空き箱や、おもちゃ、粘土、100均で購入した素材などを組み合わせ、プラモデル用の車輪やキャタピラーに固定してある。ちょっと触れると壊れそうだったり、モーター音が時々、途切れたりするものばかり……。本当に、ヘボい。
ヘボコンを主催し、大会の司会も務める石川大樹さんは、ロボットの最終チェックをする参加者のぎこちない手元を見ながら、うれしそうに解説してくれた。
「本番に備えて練習し過ぎると、壊れます。運搬中も要注意です。決まり手は『自滅』がほとんど……まず、思った通りに動きません」
工学部の学生が目の色変えて取り組んでいるロボットコンテストとは、全く異なる催しである。ロボットの動力は、その多くが乾電池。エアーポンプや息を吹き込んで動くロボットもある。ハロウィーンにちなんでかぼちゃを載せたり、ゴキブリホイホイを使ったり、クサヤをぶら下げたり……何でもアリだ。