11歳の少年が掲げた
「アベ政治を許さない」

木内 でも、この4年近く続けてきて、私の本気さをわかってもらえるのか、最近、福島で被災した人や、避難している人が話しかけてくださるようになりました。
「脱原発のことを本気でやってくださってありがとう」と言っていただくと、やはり、うれしいです。

広瀬 私の福島の仲間たちも、木内さんのことを本当に頼もしい人と思っていますよ。

木内 先日、福島から避難しているお母さんと話をしていたら、彼女が涙を流されたのです。
 その様子を小学高学年くらいの息子さんが行ったりきたりしながら見ていたのです。
夏休み、長いんでしょう。東京に私の家に泊まりにこない?
 って考えもなしに言ったら、「行く」ってその少年が言うんですよ。
 結局、2泊3日でうちに泊まりにきてくれました。

 浅草に行ったりとか、六本木ヒルズに行ったりとか、ギャラリーを見に行ったり、ほとんどの時間一緒にいて冗談ばかり言って一緒に笑っていました。
 うちには「アベ政治を許さない」というあの大きなチラシを、どこからでも見えるように貼ってあるので、その子が帰るときに、「この前で写真撮ろうか」となにげなく言うと、「うん」と言って「アベ政治を許さない」と並んで立ったら、顔がすっと変わりました。
 冗談を言っていたときとは全然違う顔をしていました。

広瀬 その少年は、何か言っていましたか?

木内 そのときは、そのことには触れずに別れました。
 ところが、その子が家に帰ったら、お母さんに、「安保反対のデモはどこであるの?」と聞いたそうです。「行きたい」って言うんですって。
 あとからお母さんが、彼が「アベ政治を許さない」と書かれたプラカードを掲げてデモに加わっている写真を送ってきてくれました。
 それを見たら涙が出ちゃって……。原発事故以来、彼の中にあったモヤモヤした怒りみたいなものが、こういう形で表れたんじゃないかなって思います。

広瀬 木内さんの本気が、言葉にしなくても伝わったんじゃないですか。

木内 そうだとうれしいです。その後もお母さんからメールがきて、
「また息子がデモに行きました。今度は友達を誘って行きました」
 って。今度は2人の少年が「アベ政治を許さない」と書かれたプラカードを掲げていました。感動しましたね。
 人は、人の本気が響いて初めて動く。
お金や物や地位で動く人ばかりじゃない、ということですよね。

(つづく)