美術品やワイン、ウイスキーには、愛好家だけでなく世界の投資家も熱い視線を注ぎ、取引市場は活況を呈している。ダイヤモンドQ編集部が、最近の動向を調べてみた。

  アベノミクス効果を追い風に国内の美術市場が久々に活況を呈している。「国際的にも現代アート人気が盛り上がっており、オークションを開催するごとに出品作品数も、売り上げも多くなっている」と語るのは、SBIアートオークションの加賀美令マネージャー。日本人作家の人気が高まっていることや円安効果もあって、「台湾や欧米など海外から電話でオークションに参加する人も結構いる」(加賀美氏)という。

 海外でも特に人気なのは、奈良美智氏や草間彌生氏など。奈良氏は寡作のため作品が出回ることは少ないが、草間氏は多作で比較的、手に入りやすい。彼女の代表的なモチーフであるカボチャのシルクスクリーン版画なら100万円台から買える。一方、100号サイズの絵画となると1億円を超す値が付くこともある。

 一般人が現実的な値段で、値上がり期待のある作品を買うにはどうすればいいのだろうか。

 SBIアートオークションのようなオークションハウスは、競売実施前に下見会を開く。その場で「今、勢いのある作家は誰か」「どんな作品を買えばいいか」とオークションハウスの社員に率直に尋ねてみるのもいいだろう。

草間彌生氏の作品を展示する香港のギャラリー。海外コレクターも多く、100万円台から1億円超まで作品は多彩

 人気が高まる前の作家なら価格は安いので、気に入った作品を4~5点まとめて買って価格が上がったときに何点か売るという手もある。ただ、「作家の評価が固まるのには10~20年単位の時間がかかる。あまりもうけを目的で買うとかえって失敗することもある」(同)ので、要注意だ。

 では、作品を売るときにはどうすればいいか。画商が相手だと買いたたかれがちだ。香港で日本人が始めたクムクワット・ギャラリーの藤田京子氏によれば、「日本の画商は英語の壁があって、海外に出ていかない」ことも要因。コレクターや美術品投資家は海外の方が圧倒的に多く、高く売れる確率も高い。そこで同ギャラリーでは美術品を香港の有力オークションに代理出品するサービスも始めた。「有名な作家の作品であれば、数倍の高値で売れることがある」(藤田氏)のである。

 一方、「日本の近代美術作品こそ、今がチャンス」と指摘するのは、シンワアートオークションの倉田陽一郎社長。現代美術は当たり外れが大きいが、近代美術は時代を経て作家の評価が定まっているので、オークションハウスなどで換金しやすい。しかも、バブル期に比べると価格は20分の1ほどに下がっている。