社長室に入り浸る女性役員
アクの強い“女帝”を恐れる社員たち

 その電話から2日後、男性役員からメールがあった。

「社長とあの女性役員の○○さんは、不倫してます。○○さんは自分の部署にいるよりも、社長室にいる時間のほうが長いようです。いまは秘書が不在なので、社長は秘書の仕事も彼女にやらせているようです」

 その後調べたところ、自分が退社した後、半年くらいしてから、社長と○○さんが一緒にいる機会が多くなったという。2人だけで出張にいくこともあって、社内では少し噂になっていたらしい。

 社員同士の恋愛、あるいは不倫に近いような出来事は、それまでにもあった。一般社員同士の恋愛沙汰は、仕事に支障の起きない限り、あまり干渉しなかった。不倫と思しき事態には、早い段階で、それとなく当事者に気を付けるように注意するか、異動、転職あっせん等で対処してきた。

 だが、社長と役員との間の不倫では話が違ってくる。不倫の噂が立ってからは、社員はその女性役員の前では、社長への批判を言えなくなった。また、その女性役員は、どちらかといえば性格は男性的、悪く言えばアクの強い攻撃的な性格だった。そのせいか、彼女と凄く仲の良い社員が一部にいる一方で、まったく彼女には近づかない社員もいた。

 ここで外国にいる元専務が危惧したのは、社長と彼女の不倫の行く末ではない。そんなものは個人で責任をとるべきものなので、それぞれで落とし前をつけてくれればいい。問題はそれが組織に及ぼすネガティブな効果だ。

 果たして、彼の危惧はすぐに現実になった。仕事が回らなくなったのだ。もともとは、カリスマ性の強い社長に心酔した社員が、自主的に身を粉にして働くような職場であった。仕事がうまくいかなかったり、人間関係で悩んでいても、社長から励ましとねぎらいの言葉があれば皆、奮い立った。

 しかし、不倫騒動以降、社長は社員に対して、非常に厳しくなった。というより、社員に対して不適切な対応が目立つようになったのだ。以前は、仕事外のことで落ち込んでパフォーマンスが落ちている社員には、リフレッシュ休暇を与え、悩み相談に乗り、そのうえでその社員がいかに会社に貢献してくれているかを感謝し、再びやる気を出させるような扱いをしていた。それなのに、今ではそういった社員を叱りつけるようになってしまったのだ。

 もちろん、社長は以前から社員を叱りつけるようなことをしたこともあった。しかし、それは社員が明らかに増長していたり、自分のミスを他人に押し付けたりした場合で、「適切」な処置だと誰もが納得するものだった。