皆が飛行機で各地に飛ぶなか、
長距離バスで5時間かけて営業した日々

過去にいた会社で1年以上「売り上げゼロ」が続いた筆者が、苦しみの中から編み出した逆転の「最強コミュニケーション術」とは?

 突然だが、筆者は「誰とでも仲良くなる」ことが得意だ。本職以外でも様々な社会貢献活動に参加していることもあり、今日も世界各国で老若男女とお会いしている。お蔭で、どんなタイプの人であってもほぼ100%の確率で会話を盛り上げることができるようになった。

 子どもの頃より生粋のしゃべり好きで人懐っこいという性格もある。しかし30歳頃までは、同世代や年下とは盛り上がるが、年齢が大きく離れた諸先輩方との会話には困ってしまう「普通のしゃべり」レベルであった。

 変化があったのは9年前、前職で「人生どん底」の営業を経験したときのことだ。そう、タイトルでも述べたように、1年間、正確には1年2ヵ月の間、「営業成績ゼロ」が続いた時代である。

 あまりに売れないので、コスト削減に気持ちが向かってしまい、皆がシンガポールからクアラルンプールまで飛行機で移動する際、ただ1人長距離バスで営業先に訪問したこともあった(ちなみに乗車時間は5時間。クアラルンプールまでは格安航空券も多くあるため、長距離バスで営業した人間は、著者が社内初)。

 筆者は9年前にデロイト・コンサルティング シンガポール法人に転職し、東南アジア、中国の日系企業の海外進出支援、域内業務改善、人事・組織再編に関するコンサルティング案件の開発営業を担当していた。

当時のことを思い出すとつらいが、同じように悩んでいるビジネスパーソンのためになることを祈る(撮影:シンガポール、セントーサ島)

 シンガポールをベースに、アジア全域における日系企業のトップマネジメント層への営業だ。コンサル会社では通常パートナーやディレクターと呼ばれる経験豊富なベテランたちが行う未知の世界に、30代前半の著者が挑戦できる喜びで、血沸き肉躍る思いだったことを記憶している。

 ところがフタを開けてみると……売れない。まったく売れない。戦略策定、組織・人事改革、オペレーション・IT改革とあらゆる領域で営業をかけるが、筆者は小さな案件の1つも取れず、1年2ヵ月もの間、完全に売上ゼロであった。

 その頃の筆者はすっかり自信をなくし、自慢のリーゼントも心なしか低くなり、自律神経失調症の症状まで出始めた。原因不明の頭痛に悩まされ、人前に出るとろれつが回らなくなる始末。このまま社会人として働けなくなるかもしれない恐怖に怯えて過ごしていた。