そもそも離婚するときに、どんな経緯でどんな約束を交わそうと、法律上、養育費は事情変更(離婚時と比べ、経済状況や家族構成等が変わった場合)による見直しが認められているのです(民法880条)。裏を返せば、離婚時にどのような養育費の金額、期間を約束しても、約束した金額を約束した期間の最終回までもらい続けることが保証されているわけではないのです。前妻の個人的な意見と法律の公式的な見解。どちらが優先するのかは言わずもがなですが、それでも前妻はまだ食い下がってきたようで……。

「他人の子より私の子を優先するのは当然でしょ!向こうの子のために、こっちの養育費を減らすなんて納得がいかない!!」

 このような前妻の傍若無人な物言いを聞き、さすがの一樹さんも内心、「自分さえ良ければそれでいいのかと思っているのか」とカチンをきたそうです。しかし、一樹さんは現妻になだめられて、「言い返したい」という欲求を何とか抑えることができたのです。そして今まで黙ったまま一言も発しなかった現妻がようやく重い口を開きました。

「夫の子を宿したい。赤ちゃんを産みたい。子どもを育てたい。私の言っていることが、そんなにおかしいでしょうか?女として生まれたのですから、当然の権利ではないでしょうか?私は決して高望みしているとは思っていません。だって、はつみさん(前妻)も彼と結婚したとき、私と同じ気持ちだったんじゃないですか?」

お金の問題が後手後手になってしまう
再婚後の不妊治療

 そんなふうに涙ながらに訴えかけ、2人は深々と頭を下げ続けたのです。前妻に2人の気持ちが通じたのか、ファミレスで頭を下げ続ける2人を放っておくのが気まずかったのか、それとも一樹さんとこれ以上、話を続けることが精神的に耐えられなかったのか、今となっては定かではありませんが、最終的には前妻は一樹さんの見直し案を受け入れるに至ったのです。

 一樹さんは不妊治療で授かった命を無駄にせずに済んだのですが、当時のことをこのように振り返ってくれました。「ようやく一区切りついて前向きに考えられるようになりました」。

 このように子作りをするにも、不妊治療を行うにも、子どもを出産するにも先立つものが必要なのだから、お金を工面するのに前妻の協力は必要不可欠なのですが、実際のところ、不妊治療「前」に前妻へ頼み込むような人はいるのでしょうか?