一樹さんのように手元の資金が底を突き、前妻の協力なくして出産まで漕ぎ着けることができないのなら別ですが、おそらく一樹さんも1年目の治療で子どもを授かり、まだ手元の援助金を食いつぶしていなければ、目の前の事態がもっと悪化するまで(例えば、子どもを出産するまで)わざわざ前妻へ頭を下げようとはしなかったでしょう。先に子作り、後に資金の工面という感じで、先手先手で動こうとケースは非常に少ないです。

 このように途中でようやく事の重大さに気づき、慌てふためき、前妻に泣きつくのですが、どうして対処が後手後手になってしまうのでしょうか?それは不妊治療は性に関する治療であり、いかんせん「羞恥心」が付きまとうからです。

 例えば、病院で自慰行為をして精液を採取したり、卵巣から卵子を取り出したり、排卵誘発剤を使った上で性交渉に臨んだり……恥ずかしくて誰にも知られたくない、できれば隠しておきたい、秘密裏に事を進めたいと思うのは当然でしょう。前妻に対してはなおさらです。

バツイチの場合
子づくりは夫婦だけでは決められない?

 森三中の大島美幸さんは「妊活」という言葉を使って不妊治療のことを公言しましたが、あくまで例外中の例外です。他の芸能人はどうでしょう。「実は不妊治療をしていました」と言い出すのは妊娠後だったり出産後だったりですが、「前」ではないのです。

 このように不妊治療の報告が後出しジャンケンのようになってしまうのは芸能人も一般人も同じですが、遅かれ早かれ、切り出さなければならないのだから、「羞恥心」という壁を乗り越えて、前もって前妻との間で話をつけておくのが懸命です。残念ながらバツイチの場合、「子どもを作るかどうか」すら、夫婦だけでは決めることができない、少し弱い立場に置かれていることを承知しておくことも大事です。

「命を授かる」という出来事は、一見すると誰にとっても喜ばしく、嬉しく、そして前向きなのだと当事者は錯覚しかねませんが、一部の例外(前妻やその子など)が存在することを無視してはいけないでしょう。しかも不妊治療の末、授かった命なら、なおさら自分以外の存在を忘れがちです。

「あっちに弟が産まれてくると困っちゃう!うちの子が不利になるでしょ。何とか阻止しないと!!」

 バツイチの場合、前妻がそんなふうに人様の子作りや妊娠、出産に対してチッと妬ましく舌打ちすることも多々あるのですが、まるで江戸時代の大奥にタイムスリップしたかのよう。まったく時代錯誤もいいところですが、平成の世で再現されても不思議ではないのです。

 なぜなら、不妊治療の件数は10年間で約2.5倍に増えており(日本産科婦人科学会ARTデータ集「体外受精、顕微授精など高度な生殖補助医療で授かった子どもの数」平成14年は1万5228人、平成24年は3万7953人)、また離婚する夫婦は年間で約23万組(平成24年は23万5406組。厚生労働省・人口動態統計)。江戸城で繰り広げられた醜い跡目争いが、あなたの目の前で繰り広げられてもおかしくはないのですから。

<出典>

・日本産科婦人科学会ARTデータ集
https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2012data.pdf

・厚生労働省・人口動態統計
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei12/dl/03_h1.pdf