しかし団体旅行で日本を訪れた中国人は、次は個人旅行で自由に各地を回りたいと考える。自由度の高い香港ではすでに海外個人旅行(FIT.Foreign Independent Tour)が主流になっている。団体旅行ではどうしても「自己実現」上の不満が残るからだ。日本でも80年代の後半には若者たちですら個人旅行を楽しむようになった。今の中国が日本の70年代初頭の旅行パターンだとしたら、あと20年近くは需要が伸び続けると予測することも可能なのである。

 南北に長い日本には多くの絶景の地があり、洗練された温泉宿が全国にあり、食事は美味しく、どこもかしこも清潔だ。いち中国人の気持ちでアジアに旅行先を求めるなら、日本は観光地として相当なバリューを有している。自信を持っていい。

 真に憂慮すべきは受け入れ態勢の遅れだ。飛行機の客席数とホテルの数が圧倒的に足りない。今年、訪日外国人は1900万人を突破する。2年前の倍だ。実は日本に来る飛行機が足りない状態で、この数値なのである。ここに空港の整備やさらなるLCCの参入などが加われば、その勢いは推して知るべし。

 みずほ総研は東京オリンピックの前年には外国人の総泊数が2.2億泊にのぼると試算した。現在3億泊で安定している国内の宿泊施設は、合計5.2億泊となり、いともたやすく飽和するだろう。政府は民泊合法化へ舵を切ろうとしているが、それでも焼け石に水ではないか。

 インバウンドは、日本では貴重な超・成長産業である。マスコミが揶揄的な態度を取りがちなのは、彼らこそ内需だけが頼りのドメスティック産業だからではないかと邪推してしまう。

(旅行会社「ホワイト・ベアーファミリー」社長 近藤康生