孫たちの丁寧語が消えた理由
そのうちに結婚して、曾孫が生まれ、大家族の居間はますますにぎやかになりました。父親もおじいちゃんとなり、
「90歳まで生きるんだ」
と言っていた祖父が、ある日、
「耳が遠くなってよかった」
とつぶやきました。
私が「なんで?」と聞くと、
「私がよしとしない孫たちの言葉遣いを、聞かなくてすむから」
と言いました。
おじいちゃんが、会話に入らなくなってしばらくしてから、孫たちの会話から丁寧語が消えたのです。
おじいちゃんの耳がまだよく聞こえていたころは、たとえば弟が兄へ、
「お兄ちゃん、これ、お兄ちゃんのでしょ?」
と言っていたのが、兄の名を呼び捨てにしたり、「おまえ」と言ったりするようになったというのです。
祖父母は「指南役」を買って出るべし
祖父母は、孫の教育に口出しするのではなく、言葉遣い、特に“返事を相手へわかるように、はっきり完結させて伝える”よう指南役を買って出てください。
私は18歳の孫がモゴモゴとはっきり話さないときは、
「このごろ、おばあちゃん、耳が遠くなったみたいでよく聞こえないから、もっと口を大きく開けてしゃべってちょーだい」
と強要しています。
「たとえ相手が返事をしても、はっきり聞こえているかわからないから、相手の顔を見て、目の動きから判断することが大事」
と教えてください。
たとえば、私の夫は本当に生返事が多いので、私はその都度、
「ハイ、いま、私が言ったことをリピートしてください」
と言っています。
おじいちゃん、おばあちゃんは、年を恥じずに、堂々と老いて、孫が敬語を使うよう導いてください。
きっと孫の将来に役立つはずです。
人は、年上に認められてこそ、自己表現する場を得られるのです。