「中性子が出てきたタイミング」と
「2号機メルトダウンのタイミング」が同じ!?
マコ それから2011年3月14~15日の福島第一原発正門の中性子線のデータがあります。 これを見ると、「中性子が出てきたタイミング」と「2号機のメルトダウンの進行したタイミング」が同じなのです。
広瀬 そう、最初は2号機が最大の危機だったはずです。この数字は、東電が測ったデータ?
マコ はい、福島第一原発正門で測定していたのです。正門にしか中性子線のモニターがなかったのです。原子炉建屋内にも中性子線の測定器があったのですが、燃料棒が溶け落ちたときに全部ダメになったからです。
広瀬 その中性子線のモニタリングポストは、いまからでも、設置すればいいのに、なぜ設置しないんだろう。私は「再臨界をあれこれ憶測する前に、中性子線を測れ!」と叫んでいたんです。
マコ 研究者に、原発作業員の人で5円玉を持っている人を探してほしいと頼まれたことがあります。5円玉は銅と亜鉛でできているので、それで中性子線の痕跡がわかるそうです。
結局、シビアアクシデント(重大事故)のとき、バッテリーを近くのホームセンターに買い出しに行ったりするために現金が必要で、お財布を提出していたために、5円玉が1個も残っていなかったのです。
広瀬 同位体を調べてわかるのかな。知らなかった。
マコ わかると聞きました。それから中性子線も測れるAPD(=ポケット線量計)とかガラスバッジをつけた作業員はいなかったのかと、日立や東芝の人たちにも聞きましたが、見つかっていません。
それから、防衛省の自衛隊員が上空から1、2、3号機の原子炉の温度を測ったりしていました。
そのときのメンバーがどれくらい被曝したかというデータがこれです。
広瀬 上空のかなり高いところでも、中性子線が出ていることになっていますね。
マコ 中性子線が青ですが、人によってかなり数値が大きい。
東大の専門家に見てもらいましたが、よくわからないということでした。「3000フィート(900メートル)程度で宇宙線由来の中性子被曝はまず考えられない。なので出所は直下か。だとすれば、地上のモニタが反応しそうなものだが…」とのことでした。この資料では、日時の表記がないため、原発との比較ができません。なので、ガラスバッジのエラーか、実際の測定値か、評価できないのです。
広瀬 中性子線は、電気的に中性だから、途中にある物質の抵抗を受けないので、1キロメートルぐらい簡単に飛びますよ。1999年に起こった東海村の臨界事故では、2キロメートル先まで中性子線が到達していたんですよ。
2011年5月11日に、福島大学が上空の放射線量の調査結果を公表しています。大学上空0.9~2.6キロメートルで高い放射線量が観測され、2011年5月時点でも原発から大量の放射性物質の漏洩が続いていることが確認されていますが、そのデータはベータ線と、ガンマ線でした。ガンマ線は2万メートル以上の高空でも測定されています。
余計なことを言ってすみません。話を戻しますと、先ほどのグラフでは、上空のかなり高いところでも、中性子線が出ていると判断して、「中性子が出てきたタイミング」と「2号機のメルトダウンの進行したタイミング」が同じと見ると、2号機の危険性はかなり大きいから、排気筒の倒壊がますます心配ですね。