「二枚舌作戦」が企業の危機を救う

 いま、多くの企業が将来を見据えるうえで、根本的なところから議論をしなければならない問題をいくつも抱えている。AI技術の発展、今後の金利上昇や大幅な為替変動のおそれ、東アジアの地政学リスク、ポイントカード経済圏戦争…。「そんな未来のことを考ええても仕方がない」、「昔から○○グループさんのお世話になっているから、他のグループに乗り換えるなんてあり得ない」「周りの反応が進んでから、撤退や移転等を考えればいいんだ」などと言いながら、結局議論することをタブー化し、深く考えることもせず、何の準備もしていない企業が多い。

 たしかに現場社員にとっては、日々の仕事と直接関係のないことをいろいろ言われても仕方がないから、表向きには「心配することはない」と言っておいてもよいかもしれないが、実際には、健全な「二枚舌作戦」をとることが必要だ。

 表向きは心配いらないとしながらも、裏ではひたすら、あらゆる可能性をもとにシナリオを考え、対策を検討して、具体的に準備することである。

 では、誰がやるのか? 実は、皆さん一人ひとりがやるしかない。

「誰かがやるだろう」と思っていたら結局誰もやっていないということは多い。なかには「経営企画や役員たちがやるべきだ」、という正論を述べる人がいるかもしれないが、冒頭の不良債権の例のように、本部中枢の人たちの動きは、いろんな面でかなり厳しく制約されていることが多いのである。

 幸い、こういった大きな変化への対応には、日々の細かいマーケティングデータはいらない。鳥の目で世界や市場と自分たちを眺めることは、実は誰でもできるのである。

※なお、本記事は守秘義務の観点から事案の内容や設定の一部を改変させていただいているところがあります。