不正会計問題から抜け出せない東芝で、事業切り離しが本格化している。パソコン事業では、国内勢との統合案が浮上し、白物家電事業も交渉が進む。再出発への準備は素早く進んでいるが、足元では不正会計が尾を引いている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)
「5年、もしかしたら10年遅いのではないか。国内企業同士が集まるという何度も見たパターンだ」。ある外資メーカー幹部はこう漏らした。
東芝が12月7日、パソコン事業について、富士通や、ソニーから分社したVAIOとの統合を検討していることを表明した。室町正志社長自身も記者会見で「制約を設けない抜本的な構造改革を行うため、幅広く検討している。富士通やVAIOとの再編は選択肢の一つ」と発言した。
東芝のパソコン事業は、過去にノートパソコンが世界トップという華々しい時代もあったが、今は不正会計問題が際立っていた部門として知られる。3代前の西田厚聰元社長の出身母体であり、生産委託先に部品を高値で売り付け、完成品を高値で買い戻す「バイセル取引」という手法で600億円近い利益をごまかしていたのだ。
もちろん、利益操作で温存していただけに、本当は大赤字。パソコンやテレビ、白物家電の「ライフスタイル事業」では、2015年3月期で1097億円の営業赤字を計上しており、パソコン事業の切り離しを模索していた。
一方、統合先候補の筆頭である富士通も、パソコン事業が業績改善の足を引っ張っており、パソコン事業を来春分社化することを10月に発表したばかりだった。
「分社化とはいうが、幹部は元から事業を売る気満々だった」と業界関係者の一人は打ち明ける。
というのも、パソコン事業を分社化して出資比率を半分以下に抑えれば、田中達也社長が目標に掲げる営業利益率10%以上が一気に視界に入るからだ。実際、パソコンや携帯電話を除く事業の営業利益率は7%近くになる。
このように、共にパソコン事業を切り離したい両社の思惑は一致しているのだ。だが、ここで一つ問題が浮上する。
「東芝も富士通も、パソコン事業を連結にはしたくないが、ひも付けはしておきたい。そのためには50%以下の出資比率が理想的なのです」(前出の業界関係者)
そこで浮上したのがVAIOだ。VAIOは、ソニーから分社する際に、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が筆頭株主になっており、今回の統合交渉でもJIPが主導する形になる見込み。ここでJIPが合流すれば、東芝と富士通の思惑も満たされることになる。