「マリオ・グリンチがサンタ・ラリーをめちゃくちゃにした」。英国・ロンドンの金融街で配られているフリーペーパー「CITY A.M.」は、12月4日の1面でそう報じた。マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁をグリンチに模した合成写真を掲載し、やゆしたのだ。
グリンチとは、人々がクリスマスを楽しんでいると山からやって来て、街を大混乱させる怪物のことだ(欧米ではよく知られた話で、2000年に映画化されている)。
前日の12月3日に発表されたECBの追加金融緩和策は、市場から大きく失望された。これまでドラギ総裁は市場の期待を巧みに操ってきたが、今回は大きな批判を浴びた。筆者はちょうどロンドンに出張していたので、多くの市場関係者から「マリオのせいで損失が出た」との不満を耳にした。
とはいえ、ECBは超過準備へのマイナス金利を0.1%引き下げ、量的金融緩和策(QE)の実施期間を少なくとも半年延長した。グリンチのように悪意を持って市場を混乱させたわけではない。
しかし、10月以降の情報発信において、ドラギ総裁は事前の期待を高め過ぎてしまった。マイナス金利のさらなる低下や、QEの債券購入プログラムの金額拡大を市場は織り込んでいた。
来年3月の理事会で、ドラギ総裁が追加緩和策に再びチャレンジしてくる可能性もあるが、今回の誤算はどこで生じたのだろうか。