国によって異なる中央銀行の業務目的
米国の中央銀行であるFRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)が、2015年12月15日~16日のFOMC(連邦公開市場委員会:Federal Open Market Committee) において、10年振りの利上げを実施する可能性が高まっています。さらに金融市場では、すでにその先の利上げの計画をも織り込み(予想し)つつあります。
米国は2008年9月に発生した世界金融危機「リーマンショック」の緊急時対応として、2008年11月から量的金融緩和を続け、2015年11月まで7年間継続しました。この量的金融緩和は米国株式を7年間にわたって上昇させ続けたエンジンとなりました。しかし、FRBは2015年11月に量的金融緩和を終了し、徐々に資金量を減らしています。次は、金利の引き上げ(利上げ)という流れとなるわけです。
世界に数ある中央銀行の業務目的は同じ、と考えている方が多いかもしれませんが、実は、各国の中央銀行ごとにその目的は異なります。各国の中央銀行法を見るとそのことがよくわかります。たとえば、ECB(欧州中央銀行:European Central Bank)は、ある意味一番“中央銀行らしい”中央銀行であり、「物価」の安定のみを目標としています。それに対し、FRBは「物価」の安定と「雇用」の最大化(景気対策)の2つを目標としているめずらしい中央銀行です。
ちなみに日本銀行の場合は、物価の安定のほかに、政府の経済政策に整合性のあるもの、と半歩だけ踏み込んだ形になっています。具体的には、日本銀行法には政府との関係として、第四条に「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」となっています。つまり「政府が景気刺激策をとっているときに、引き締めは行うな」ということで、ある程度、方向性を合わせなければなりません。
雇用の最大化がFRBの目標
経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)には、景気指標として失業率が入るのが一般的です。また、世界各国の経済当局には「強い思い」というものがあることが多いのです。米国の政策担当者の強い思いには、米国における最大の金融危機であった「大恐慌」を起こさない、というトラウマに近いものがあります。そのため中央銀行ですら、景気対策、とくに雇用の最大化に注力しています。このような中央銀行は世界に類を見ません。