米国の化学トップであるダウ・ケミカルと、同大手のデュポンが12月11日に統合を発表し、海を越えた日本の化学業界をザワつかせている。
無理もない。この統合で生まれる新会社「ダウ・デュポン」の売上高は、2014年の両社の単純合算ベースで929億ドル(約11.1兆円)。同売上高743億ユーロ(約10.8兆円)を誇る世界最大手の独BASFを抜くメガ化学企業が誕生するのだ。
ダウ・デュポンは16年下期をめどに合併を完了し、最大2年をかけて農薬や種などを扱う「農業関連会社」と自動車向けプラスチックなどを扱う「素材科学会社」、太陽電池の材料などを扱う「特殊化学品会社」の3社に分割される。
日系化学大手の経営陣たちは、「アクティビスト(物言う株主)に迫られていたとはいえ、企業統合するとは驚いた」「一歩も二歩も先を行ってるよなぁ」とうなる。
事業を3分割するため、最大手に君臨する期間はそう長くはない。それでも「素材科学会社」は510億ドル(約6・1兆円)規模。日本の化学業界トップの三菱ケミカルホールディングスより大きい。
日系化学関係者は「収益の柱となる大型製品でバッティングするものがないから」と、ダウ・デュポン誕生が「直接的に大きな脅威にはならない」と異口同音に語る。
しかし、研究開発に基づいた高付加価値製品の創出に強みのあるデュポンと、グローバルな生産拠点と厚い顧客基盤を持つダウが補完的に事業を展開していけば、素材間競争という意味では手ごわい相手になろう。製品のラインアップが増えることで、顧客への提案力が高まる点も侮れない。