中期経営計画で営業利益率10%を掲げる昭和電工。だが事業環境は年々、厳しくなっている。飛躍への打開策を市川社長に聞いた。

昭和電工社長 市川秀夫<br />工場も聖域なき切り込みの対象<br />10年先に勝ち残る絵を描く<br />Photo by Toshiaki Usami

──1月に、数十年間続いた事業部制を廃止した。狙いは何か。

 既存の方法では経営資源の分配に矛盾が出てきたからだ。各事業部が割り振られた予算を使い切ることに注力してしまうなど、組織全体の緊張感もなくなっていた。

 昨年度の業績は減収減益に終わった。石油化学品の需要の低迷やエレクトロニクス業界の停滞など、産業構造の大変化を目の当たりにした。組織内の各役割を抜本的に再編するため、従来の6事業部門と研究開発本部、生産技術本部を廃止した。各事業部と工場、研究開発機能は社長直轄とし、経営のスピードアップと効率化を図る。

 小さくて多過ぎる製造拠点も問題だ。聖域にも切り込み、組織全体で“あるべき姿”に変えていく。

──「事業モデルの再設計」も強く打ち出している。

 昨年末から各事業部長とディスカッションを何度も行い、5年、10年先に勝ち残る絵を描き直しているところだ。

 基礎化学品のアンモニアを一例に挙げると、主原料の水素をどのように調達するかが事業を考える際の出発点になるが、当社の川崎工場では廃プラスチックから精製した水素を約4割使っている。残り6割は天然ガス由来で、事業部長はコストダウンのためにこの比率を5対5にしたいという。