民間企業や住民がこれをやりたいと言ったとき に、こうやればこの事業は実現できると後押しできるのが、質の高い行政です。実は国には、地方が活用できるメニューが山ほどある。果たして自治体のみなさんは、それを熟知しておられるか。「こんなことでお困りなら、この仕組みをお使いください」と、的確に応えられる行政でなければなりません。

――島根県海士町などの例みると、首長に経営感覚がある。そして自治体がオープンで、外から人材を集めているという印象があります。

 自治体の首長は住民が選ぶもので、中央があれこれいうことはできません。ただ、うまくいっている自治体の首長は、役所の外で仕事をした経験をお持ちの方が増えている。島根県下の役所などに行ってみると、東京や関西の有名大学を卒業して、地元に帰ってきたという人も増えています。そういう人たちは、地元の感覚と外の感覚があり、民間の視点も持っている。地元や役所以外で経験を積んだ人をいれることによって、その地域のよさが見出されているのでしょう。

 その点では、役所の人事序列からいけば、おかしなことかもしれませんが、できるだけ民間の人をいれて、その知恵や力を活用していくことも、一つのポイントではないでしょうか。そういう自治体も増えています。

官の政策や予算は商品
売れなければ検討し反省する

――財政再建に成功した首長さんなどは、帳簿上の収支だけでは分からないキャッシュフロー感覚があるように見受けられますが……。

 キャッシュフロー、昔流に言えば資金繰りですが、これが理解できるということは、民間の経営感覚があるということです。その地域を変えていく主体は民間です。役所はその邪魔をしないで、いかにそれを手伝うか。民間が何を求めているのか、役所の方から出向いて行く。市役所や町役場は距離が近いけれども、実際には住民から遠い存在であってはいけません。住民の身近にあるのが、パブリックサーバントです。

 われわれにとって政策や予算は商品なのです。ニーズにマッチしなければならない。企画開発し、商品を設計し、宣伝販売し、売れたらもっとつくるし、売れなかったら、なぜかと検討し反省する。今まではそのサイクルがほとんど無視されていました。役所は「おれたち偉いんだ、賢いんだ」という意識を払拭しないといけません。

――しかし、地方創生は黒田バズーカ砲と言われる金融緩和のように、すぐに効果が出るというものではありません。息の長い地道な活動の積み重ねが必要ですね。

 そうです。だから私の役割は地方創生の「伝道師」のようなものです(笑)。

(了)