リコール騒動で足踏みするトヨタ「レクサス」を遠目に眺めながら、日産が海外市場で「インフィニティ」のラインナップ拡充に動いている。カルロス・ゴーンCEOは、同ブランドにEV(電気自動車)を投入する計画も明らかにした。果たして、日の丸高級車ブランドの代名詞をやがて奪うことはできるのか。
(文/ジャーナリスト、ポール・アイゼンスタイン)
日産自動車が日本国外で展開する高級車部門「インフィニティ」は、まったくの新車種とモデルチェンジした既存車種を次々に発売することで、高級車ブランドのトップグループに割り込むことを狙っている。
写真:ロイター/アフロ
手始めは、デザインを一新したスポーツ多用途車(SUV)「QX56」だ。製品ラインとしては対極になるが、電気自動車市場に主力製品の姉妹モデルを投入する計画もある。
だが、過去にも製品ラインアップを拡大しようと試みてきたにもかかわらず、インフィニティは長年にわたりBMWやメルセデスベンツといったドイツ車に代表される他の高級車ブランドに後れをとってきた。インフィニティと同様に20年前に世界デビューを果たしたトヨタ自動車の高級車部門「レクサス」には大きく水をあけられている。
「今年は成長を狙っている」と主張するのは、米インフィニティ部門のベン・プーア副社長だ。「新製品は非常に重要だが、他にもわくわくするような要素はある」。
インフィニティにとって有利に働く可能性のある要素の一つは、宿敵レクサスとその親会社であるトヨタが、予期せぬトラブルの続発に悩まされていることである。世界最大の自動車メーカーであるトヨタと、その高級車部門であるレクサスは、ここ数ヶ月、相次ぐ安全性問題につきまとわれており、5月にもセダンの代表車種である「LS」をリコールしたばかりだ。
いまだに見えてこないのは、この問題がどれくらい長期的な影響をレクサスに与えるかという点だ。レクサスは、世界最大の高級車市場であるアメリカで、多年にわたり首位の座を維持している。レクサスの販売台数は平均してインフィニティの2倍以上を推移している。インフィニティの販売台数(アメリカ)は2000年代半ばには約13万台でピークに達し、その後2008年には11万2989台に減少、昨年はさらに28%減少して8万1089台となった。