創業147年の老舗がつくる
“小さい高級生ガキ”が大人気

かなわ水産・三保達郎社長。自分たちが作った牡蠣は自分たちで販売する先代社長の理念を守る

 広島県内でもいち早く「生食用カキ」にこだわり続けていた企業がある。慶応3年創業、147年の歴史を誇る広島県江田島市「かなわ水産」だ。

「江戸時代から、船にカキを乗せて大阪、九州へ向かい、その場でむき身にして販売したり、その場で料理を食べさせていたそうです」

 そう語るのは4代目となる、かなわ水産社長・三保達郎さん。

「江戸の頃から6次産業化」を行っていた同社は、養殖、加工、販売までを自社一貫で行うことにこだわっている。カキ種苗採取、カキ筏製作、カキ剥き身包装加工、スチーム加工、直営カキ料理店、直売店など、海から食卓まで一貫して管理されている。なぜ、自社でそこまでやるかといえば、「生食用専門」であるがゆえ。

「自分たちが作った安全性を確保した生食用カキを、消費者にまで確実に届けるためです」(三保さん)

 かなわ水産は、県外進出の歴史も早い。広島のカキの美味しさを伝えるべく、昭和22年には東京・日本橋高島屋に直営店をオープン。日本橋という場所で営業するからには高いブランドイメージを築くべく、「あえて、生に特化した」ことが同社の「生食のみ」という歴史につながっている。

「カキ好きの人は、やっぱり、生で食べるのにこだわりますよね」と三保さん。

 しかし「生」を貫くのは大変だ。

無人島の大黒神島。周辺の海は透き通るような美しさ

 カキは魚介類の中でもリスクが大きく問われる貝。広島県ではそもそもカキに対して他産地よりも、かなり厳重な安全対策を行っている。そのひとつが養殖海域の指定だ。食品衛生法による「生食用かき」の規格を遵守するため、毎年定期的な海水・養殖かきの検査により「生食用かき指定海域」(清浄地域)と、主に沿岸部で、加熱調理用カキしか出荷できない「指定外海域」を指定している。

 かなわ水産では、さらに海域にこだわっている。養殖を行うのは広島湾沖合約30キロに位置する無人島・大黒神島沖のみ。清浄海域内でも、生活排水の心配がなく、海水が屈指の透明度を誇るエリアだ。

「うちは生食しかやらないから、ここでしかカキは採取しません。あえて自分の首をしめてます。だから、不利。大変なんよ」と三保さん。

「カキ、育たんのよ、あそこ」

 え?えっ? エサ…は????

「エサは与えられんわね」

 カキの養殖に人工的なエサはいらない。エサは海中の植物プランクトン。きれいな海は安全性が高い代わりに、エサは少ない、ということなのだ。