そうしたことも含めて総合的に判断しても、やはり時間的に猶予がない。増税がある程度、経済にインパクトを与えるのは仕方ないことなので、あとはどうそのインパクトを薄めるか考えながらやっていくほかないのではないでしょうか。増税だけではなくて、社会保障改革をもっと踏み込んでやるべきだというのは当然の前提ですが。

「増税するなら覚悟をもって対策を」
「前回の教訓を生かすべきというのは同感」

いいだ・やすゆき
明治大学政治経済学部准教授、エコノミスト、株式会社シノドスマネージング・ディレクター、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員。1975年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。駒澤大学経済学部准教授などを経て現職。『世界一わかりやすい 経済の教室』『ゼロから学ぶ経済政策』『経済は損得で理解しろ!』『歴史が教えるマネーの理論』『脱貧困の経済学』(共著)など著書多数。 Photo:Masato Kato

飯田 社会保障についてよほど大幅な改革ができない限り、増税自体はもう不可避でしょう。その意味で私は恒常的に増税に反対というわけではありません。問題はそのタイミングです。

小黒 私も、もう少し自由度を持って上げられるようにした方が良いとは思います。景気循環などいろいろとある中で、「必ずこの時期に上げなきゃいけない」というのはほとんどあり得ないですよね。例えば英国の財務大臣は、一定の範囲においてですが、臨機応変に増税を実行できる権限を持っています。

飯田 そうなんです。ある程度景気動向を見ながらタイミングを選べる形にする手もある。今回はわざわざ軽減税率まで入れたので、品目ごとに時期をばらしてみてもいい。ともかく全部を一気に2017年4月に集中させるというのは恐い。

 そして、消費増税せざるを得ないのであれば、しっかり対策を行ってほしい。2014年の消費増税では、なぜか景気にそれほど大きな影響がないという議論が主流になってしまった。そのせいで対策が遅れたわけですし、民間企業の在庫の積み上がりが起きたことでショックの残存が長くなった。例えば初年度は増税の税収分を全部使って給付措置を行うくらいの覚悟でやらないと、それこそ「もう二度と消費税の話はするな」ということになってしまうと思います。

小黒 私は消費増税しなければいけないと思っていますが、2014年4月の教訓をよく考えて、ショックの変動が小さくなるような対策をすべきというのは同意見です。

 前回の教訓は、増税分の転嫁を同時点で全部やろうとしたことです。企業が増税負担の転嫁をできるようにということで“転嫁Gメン”のようなものも作られたりしました。しかしこれだと、全て同じ時点でショックが走る。本来、もっと柔軟な仕組みにしなければいけない。欧州の増税で観測できるように、増税の前から価格を上げてもいいし、増税が終わった後に上げていってもいい。また、住宅など高額の税金がかかる部分をどうするのかということも考えないと、ショックがまた大きくなってしまう。諸外国との比較も必要です。カナダの還付方式など、やり方は色々とあります。

飯田 もう一つ、その後も増税は必要になることもあると思いますが、そのときにはぜひ、消費税ではなく資産課税の方にシフトしてもらいたい。現在の日本で財政や税収のバランスを見ると、明確に足りないのは資産課税です。所得課税、消費課税、資産課税のうち、資産課税があまりにも少ない。