「新しい企業が資金を集められるかが勝負」
「日本の閉塞感を打ち破る起爆剤になり得る」

飯田 ただし、日本の情報関係産業で厳しいのは、大金持ちがいないということです。海外だと、時価総額1000億円以上の非上場企業というのが普通に存在する。なぜかと言えば、資金調達を5人くらい、場合によってはそれこそ1人の大金持ちに頼っているからです。上場して株主対応をしている暇が惜しいので、がっつり資金を出してくれる人と組む。しかし日本では、そこまで資金を持っている人がいない。

 今は、スティーブ・ジョブスの「ガレージから世界へ」のような時代ではなくなりつつあります。最初にかなり金がかかる。日本では小口で多数から集める何らかのモデルに頼らざるを得ない。これがうまくいくかどうかが、大変重要です。特にベンチャーキャピタルが資金を調達できるのかは、勝負になってくると思いますね。

小黒 そこでもう一歩先の話があるとすれば、データの証券化のような話ですね。不動産のREITと同じ手法で、例えばビッグデータと金融を接続するため、ビッグデータ関連の権利に対する集団投資スキームを整備する。そうすると、日本だけではなく海外からも、リターンを求めて金融セクターのお金が入ってくる。

 総務省の分析などで、IoTやスマートフォン、ソーシャルネットワーク、ビッグデータなどの2015年の市場が約33兆円、これが2022年には66兆円市場になると推計しています。マーケットの成長率が年15%くらいだとすれば、経済学の理論ではリターンつまり収益率も15%くらいになる可能性がある。投資家にとっては非常に魅力的です。

飯田 そうしていかないと、ベンチャービジネスの立ち上げが難しくなってしまう。これについても、実は一つ追い風があります。徐々に高齢化によって取り崩されるとはいえ、日本は国民の金融資産がいまだにすごく多く、投資先を探している。日本の資産家の多くは高齢者だと見てよいのですが、世代的にこれからの高齢者はさほど株を毛嫌いしなくなるのではないかというのも支援材料です。あとは、規制緩和ですね。

小黒 日本が、その環境を整えられる可能性はある。経済成長だけでは財政再建や社会保障問題の解決はできないですが、成長戦略の的をもっとピンポイントで絞って力を入れていくと、GDPを伸ばしていくことができるかもしれない。要するに2016年を「IoT元年」「AI元年」「ビッグデータ元年」として、安倍首相がもっと大きく打ち出していくといいのではないか。そうやって政権運営していくと、成長についても違ったシナリオがあり得ると思います。

飯田 現状だと予算額も少なすぎて、IoTとAIの研究費支援には二百何十億ってちょっとがっかりですよね。

小黒 足元で、環境が大きく整いつつある分野もあると思うんですけれどもね。例えば、政府は今、現政権の強力な推進に基づき、医療関連のデータベース構築を進めています。個人情報の問題もありますが、その一部を民間で使わせるようなスキームも徐々に議論している。また、ビッグデータ同士のマッチングや人工知能・IoT等に関連する新たなビジネスモデル創出に向けて、経産省も「IoT推進コンソーシアム」の立ち上げなどを展開しています。