過激な主張は思いつきではない
「オバマの正反対」を狙う戦略

 《私は今までトランプ氏と聞くと、おかしなヘアスタイル、そしてスキャンダルと悪いイメージが強くありました。しかし、この番組の中で際立つ鋭い指摘、奇想天外なビジネスアイデアや視点を知り、彼に対する見方がすっかり変わってしまいました。カリスマ性と即決する判断を仕事に生かし、自分の信じるままに突き進んでいく彼を見て、生きていく力強さと逞しさを感じました》(産経新聞2004年9月19日)

 2004年当時、米『フォーブス』誌の長者番付では、トランプ氏の資産は25億ドル(約2800億円)で205位。カリスマ性のある経営者や大富豪は他にも多く存在しているにもかかわらず、アメリカを代表する「異能の経営者」というブランディングができたのはこの番組によるところが大きい。

 たかがテレビ番組で大袈裟な、と思うかもしれないが、かの国ではテレビにおけるイメージは政治と密接にかかわっている。あのオバマ大統領も、オバマケア(国民皆保険制度)の促進のためコメディ番組に出演しているし、「タフさ」のイメージ訴求のために大自然のなかでサバイバル体験を行うという人気リアリティ番組『Running Wild with Bear Grylls』にも出ている。

 トランプ氏が「自己ブランディング」の達人だとすれば、数々の「放言」もまったく異なる意味を持ってくる。つまり、思いつきや感情の赴くままに言っているのではなく、ある一定のイメージ形成のための発言だと考えられるのだ。

「そんな馬鹿な」と思うかもしれないが、そう考えるといろいろと辻褄が合うところがでてくる。

 実はトランプ氏が放言する移民排斥やモスク監視というのは、オバマ大統領が周囲の反対を押し切って進めてきたことの対極に位置するものなのだ。

 オバマ大統領は2014年、不法移民500万人の救済などを盛り込んだ大規模な移民制度改革で「摘発を危険な不法移民に絞る」と表明し、生ぬるいのではないかと批判を受けている。また「宗教の自由」を強く訴え、グラウンドゼロ付近のモスク建設も支持している。つまり、「移民に優しく」「ムスリムにも理解を」という100%リベラルなスタンスでやってきたのである。