あるアスベスト除去のコンサルタントは、こう実情を明かす。

「エレベーターシャフトやダクトシャフトといった縦区画での除去工事は隙間も多く、気圧の差による空気の流れが生じやすい。そのためアスベストが外部に漏れないようにする『密閉養生』が容易でなく、(空気の流れによって)養生が破れたりもするため、きちんと建物全体の空気の流れを把握した上で工事を計画しないと飛散事故につながります。ところが、こうした対策技術が国の作業マニュアルにも十分に記載されておらず、講習でも教えられていないので、きちんと対応できる業者が少ない状況です。ですから縦区画の除去工事は、アスベストを飛散させる事故だらけです」

 そして、東京高裁・地裁のアスベスト飛散疑惑については、「はっきりとした情報がないので断言はできないが」と前置きした上で、こう指摘する。

「ダクトシャフトの除去で特定の空調系にだけ飛散があったというのが事実だとすると、除去工事の際に建物の空調を動かしたままだった可能性がある。居ながら除去のときに空調を回したら(隣接する区画の気圧が下がってその方向への空気の流れが生じるなどして)、除去現場の負圧が効かなくなって漏えいするのは当然です。こうした現場では、1リットルあたり数百本単位でアスベストが飛散していることが少なくない」

 今回の東京高裁・地裁では総繊維濃度で最大1リットルあたり7.5本ということなのでそんなことはないと思われるかもしれない。だが、測定は12月13日の工事からほぼ丸1日が経過した14日夜であり、工事中や工事直後には相当高濃度だった可能性もある。加えて、仮に分析結果にアスベストの含有がなかったとしても、測定までの1日の間に拡散してしまって検出されていないこともあり得るという。

「もっとひどいのは、成形板とか『レベル3』ですよ」と、前出の分析業者は打ち明ける。

 アスベスト含有建材は、解体・除去作業の際に必要となる対策などから3つの作業レベルに分類される。アスベストを含有する吹き付け材など「レベル1」やアスベスト含有の保温材や断熱材、耐火被覆材など「レベル2」は「飛散性」とされ、作業の届け出をはじめ、隔離養生や負圧除じん装置の使用、防護服・防じんマスクの着用など厳重な措置が必要となる。