建材中アスベスト(石綿)の分析をめぐってまたも混乱が起きている。今度はJIS化した国際標準規格(ISO)分析法を通達で否定するという。ところが、国側の説明は支離滅裂で、ISO法がおかしいと主張する根拠すらろくに示せていない。分析をめぐる混乱はどれほどの影響をおよぼすのか。
「現在改正中の建材中アスベスト分析法で、アスベストの定義が2つあるんです。これ、一体どうするつもりなんでしょう」
分析業界からこんな不安の声を聞いたのは今年11月のことだ。その分析法とは、建築物などの改築・解体工事に先立って工事対象となる建物などにアスベストが含まれていないかを調べるため2006年3月に制定された日本工業規格(JIS)の分析法「JISA1481」である(2008年6月改正)。2012年末から経済産業省と国土交通省の外郭団体、建材試験センターが事務局となって、このJIS分析法の改正に向けた原案作成委員会を開催して検討が進められてきた。
そこでは従来の日本式のJIS分析法の改正作業だけでなく、国際標準化機構(ISO)が制定(2012年7月発行)した、建材中にアスベストが含まれているかどうかを調べる定性分析法の国際標準規格「ISO22262-1」をJIS分析法に組み込むための審議もおこなわれていた。
すでに原案作成は済み、今年8月から10月にかけてパブリックコメント募集も終わっていた。ところが、このパブコメ募集で公表された改正JIS原案で採用したJIS分析法とISO分析法とでアスベストの定義が異なっているというのだ。
「これではどっちの結果が正しいんだとクライアントに言われたら説明できない」と分析業者は困惑する。
分析対象が同じである以上、定義が違っていれば当然分析結果に影響する。分析業者の嘆きも当然である。だが、取材を進めると、単に依頼主に説明できないという程度の話ではなく、はるかに深刻な問題を内包していた。