悪徳業者が免責される!?
改正大防法の実態

「実質的な規制緩和です」──。

 以前、この特別レポートにて6月17日に成立した改正大気汚染防止法は、所管する環境省の無能さが原因で、東日本大震災の被災地などを含め、全国各地で頻発するアスベスト飛散事故を防止するものではない代物になってしまったことを詳述した。

 しかし、同改正法のお粗末ぶりは、それだけではなかった。同改正法によって、逆に新たな法の抜け穴がつくられてしまうというのだ。

 今回の法改正の目玉とされるのは「発注者責任の強化」である。これはアスベスト除去工事をする際の届け出義務者を、解体工事などを請け負う事業者(法的には受注者)から解体工事などの発注者(持ち主が自ら施工する場合も含む)に変更するものだ。これによって、発注者側が工期や金額的に無理な発注をしたことで不適正な工事になった場合に発注者責任を明確にするという。

 また解体工事などを請け負った事業者が建物にアスベストがあるかどうかの調査をする義務、および調査結果を発注者に書面で説明する義務を追加する。法の不備を補う側面があることは事実なのだが、「そこに抜け穴がある」と、アスベスト問題で住民からしばしば相談を受けるというオリーブの樹法律事務所の牛島聡美弁護士はいう。

「この法改正によって実質的に事業者に対する罰則がなくなってしまうんです」

「わからなかった」などと弁明するも
実際にはアスベスト製品名まで把握

アスベストを飛散させた旧校舎の解体工事現場は、新校舎の目と鼻の先だった。解体時、新校舎前の校庭も使われており、子どもたちはアスベストに曝露した可能性が高い。青いブルーシートは養生しているというが、その効果は不透明だ(2011年8月撮影) Photo by Masayuki Ibe

 2011年5月下旬に神奈川県綾瀬市で起こったアスベスト飛散事故を事例に説明していこう。この事故は、同市の綾瀬小学校旧校舎解体工事で、2本の煙突内側にアスベスト(発がん性の高いアモサイト)を70~90%と高濃度に含む断熱材があるにもかかわらず、対策なしに解体し、アスベストを飛散させたものだ。