3月期決算企業の本決算発表が終わるやいなや、6月には第1四半期(以下1Q)の決算月を迎える。株式市場では7月半ばから始まる1Q決算発表で会社側がどの程度、2010年度の業績を上方修正するかが注目されている。

 例年、1Q決算発表で上方修正された銘柄は素直に株価が上昇するため、こうした銘柄へのシンプルな投資が効果的だ。しかし今回の1Q決算発表を受けた銘柄選別は難しいと考えている。

 第一に、株式市場で上方修正が行き過ぎとも見られるほどに期待されていることだ。このため会社が上方修正しても、株価はあまり反応しない可能性がある。

 市場の業績期待を見るにはアナリストのコンセンサス予想(実際には各社アナリストの予想の平均値)が使われる。

 たとえば、QUICKが提供するコンセンサスを使い、会社側の営業利益の予想値と、コンセンサスの予想値との差を見ると、東証1部企業の65%(5月末現在)でコンセンサス予想が会社予想を上回っている。

 株価はすでにコンセンサス予想を織り込んでいると見られ、1Q決算発表で会社側が上方修正しても、逆に材料の出尽くしとなり株価は下げる可能性もある。

 第二に、円高ユーロ安や世界的な景気の不透明感が根強いなか、足元の業績のモメンタムは強くても、その持続性に懸念があることだ。1Q決算発表で上方修正されても長期的な見通しが不透明であれば、株価への反応も限られるだろう。

 そこで、足元では会社側の利益予想の修正を利用するのではなく、別の戦略に期待したい。筆者はむしろオーソドックスなPER(株価収益率)投資が効果的と考えている。単純にPERが低い銘柄に投資をする戦略だ。

 今後はこれまでと違って、PERなどの妥当なバリュエーションが市場で評価される局面になると見るためだ。