現在の中東情勢は一触即発
ソ連没落後に大混乱した東欧に酷似

 東欧は1980年代まで、事実上ソ連の支配下にあった。しかし、85年に「やさしい男」ゴルバチョフがソ連書記長になると、数年で「民主化革命」のドミノ現象が起こった。結果、チェコスロバキアや、ユーゴスラビアは分裂。特にユーゴスラビアは、(2008年に独立宣言したコソボを含め)7つの独立国家に分断された。さらに1991年、ソ連自身も15の独立国家に分裂。怖いソ連があった時代は表面化しなかった、様々な民族間紛争が起こってきた。

 今回のサウジとイランの対立も、根本的には同じ構図である。米国は、もちろん崩壊していないが、中東への関与を減らしつつある。

 たとえば、米国は「ニムル師を処刑しないよう」サウジに求めていた。米国が怖ければ、サウジは処刑しなかっただろう。しかし「米国は何もできない」ことを確信したサウジは、処刑を断行した。

 もし、イランが「サウジとケンカすれば、米国が出てくるぞ」と恐れていれば、民衆の大使館襲撃を(事実上)黙認しなかったかもしれない。要するに、サウジもイランも「もう米国は関係ない」と感じているので、憎悪を抑制する必要がなく、言動が大胆になっているのだ。

 では、サウジとイランは戦争になるのか? あるいは、スンニ派諸国とシーア派諸国の中東大戦争に発展するのだろうか?

「理性的」「常識的」に考えれば、サウジもイランも「戦争したくない」だろう。サウジは「米国からの支援なしでイランと戦って勝てるのか」、自信を持てないはずだ。

 一方のイランは欧米と和解し、制裁が解除されつつある。これから原油・天然ガス輸出を増やして景気がよくなるだろう。世界中から大きな投資話も入ってきている。つまり、米国に裏切られたサウジとは反対に、「順風」が吹いている。イランは、サウジとの戦争で、この流れをぶち壊したくないはずだ。

 しかし、サウジとイランは、既にシリアやイエメンで「代理戦争」を戦っている。また、歴史を見れば、規模の小さな事件が大きな戦争に発展した例は、山ほどある。たとえば、第1次世界大戦が起こった直接のきっかけは、オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者・フェルディナンド大公がサラエボで暗殺されたことだった。

 数発の銃弾が、世界大戦の引き金となったのだ。中東の状態は今、同じように、規模の小さな事件が大戦争に転化する可能性がある、とても「脆い状態」にあるといえる。