約1年で3分の1近くに
原油価格下落の負の効果

消費者の立場からは原油価格下落はメリットだが、世界経済全体で見るとそうとは限らない

 足元で原油価格の下落に歯止めがかからない。ニューヨーク市場で取引されるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)価格は、12月14日現在、1バレル40ドル台を割り込み35ドル台になっている。

 昨年夏場には、1バレル100ドル以上だったことを考えると、約1年の間に原油価格は3分の1近くまで急落している。原油価格の下落によって、わが国をはじめ主要国には物価の下押し圧力が働いており、世界経済にも無視できない影響が及んでいる。

 急落の背景には、中国経済の減速などで世界的に需要が落ち込んでいる一方で、サウジアラビアなど主要産油国の増産が続いていることがある。それによって、世界的な原油の需給が大きく崩れている。

 原油以外の銅や鉄鋼石などの資源価格も不安定な展開になっており、経済専門家の間では、2014年年央まで続いた主要資源価格の上昇=“資源バブル”が終焉を迎えたとの見方が台頭している。

 問題は、逆オイルショックに代表される“資源バブル”崩壊が、世界経済に与える影響だ。わが国やインドなど資源輸入が多い諸国にとって、資源価格の下落はそれなりのメリットがある。しかし、産出国にとっては、かなり大きなマイナス要因だ。

 シェールオイルの主要産出国である米国は、エネルギー関連企業の収益の低下傾向が鮮明化しており、これから景気の先行きに不透明感が出てくる懸念もある。世界経済の牽引役である米国経済の減速が明確になると、世界経済の回復が腰折れすることにもなりかねない。逆オイルショックのインパクトは小さくない。