リスク5:ISテロのリスク
日本が標的となる可能性も排除できず

 米国やフランス、ロシアなどの空爆作戦により、シリア・イラクでISが支配している「領土」は減少していくのだろうが、ISにリクルートされた外国人戦闘員たちが拡散し、他の中東地域や欧州、アジアなどでテロを実行していく蓋然性は逆に高まっていく。

 欧州でのテロと同様、アジアにおいてもリスクは高い。特に相当数のウイグル族やインドネシア出身者が既に中東を離れたとされており、東南アジアなどで自爆テロが繰り返される可能性が指摘されている。最近のインドネシアでのテロはその疑いが濃い。

 日本については、外国人は目につきやすく、武器の調達も容易でないところから相対的にはテロのリスクは高くない。しかし本年の先進7ヵ国首脳会議(G7)や2020年東京オリンピックが、格好のターゲットと見なされる可能性は排除されない。もちろん、諸外国で日本人や日本の施設、あるいは日本に向かう航空機が標的になる(1988年のソウル五輪では前年に北朝鮮テロリストによる大韓航空機爆破事件が発生した)可能性も念頭に置かなければならない。

リスク6:中東の紛争が大規模な衝突に至るリスク
不安定化するサウジと存在感を増すイラン

 中東情勢の流動化の原因は、米軍の撤退及び米国の影響力の低下により生じた力の空白や、「アラブの春」によって専制体制が崩壊した後、チュニジアを除けば十分な統治体制が構築されていないという意味での力の空白によるところが大きい。この二つの力の空白がISの勃興を生み、シーア派とスンニ派の宗派対立を顕在化させていった。

 なかでもスンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派の大国イランの対立は深刻な様相を見せている。サウジアラビアによるイランとの国交断絶の背景には、両国を取り巻く情勢変化がある。イランが核合意により中東での存在感を高め、イラク、シリア、イエメンなどでシーア派を支援する活動を活発化させている一方で、サウジアラビアを取り巻く環境変化は大きい。

 これまで「石油」「安定した王政」「米国との強い同盟関係」という三つの要素がサウジアラビアの安定を支えてきたが、油価が低下し、王政内部の人的変化が生じ、イランとの核合意成立により米国との同盟関係も相対化した。国内の不満を抑え王政への求心力を高めるため、対外的に強硬な行動が必要と判断されているのかもしれない。