そうした戦略を考えるとき、ルイ・ヴィトンがなぜ売れるようになったのかがヒントになります。ルイ・ヴィトンが世界中でこれほど売れるようになったのは、日本のおかげだと言われています。

 1970年代、日本にルイ・ヴィトンの直営店がなかったため、輸入業者が「フランスで流行っているバッグだ」と言うことで5万円のバッグを15万円から20万円で売っていました。よほどの金持ちやファッションにこだわりのある人だけが買っていたのですが、日本の航空自由化と共にジャンボジェットが就航し、多くの日本人がヨーロッパ旅行に行くようになりました。そうした旅行者の中で数多くの日本人女性がパリのルイ・ヴィトンに押しかけて店が大混乱になりました。パリでは「あれは金持ちの店」ということで、一般人は誰も行かなかったのに、日本人のOLや女子大生が大挙して来たものだから、ルイ・ヴィトンは迷惑がって入店規制をしたほどです。

ルイ・ヴィトンと日本人に見る教訓
「爆買い」はやはり奥が深い

 ここでルイ・ヴィトンの経営者が偉かったのは、わざわざパリまで買いに来てくれるくらいだから「日本で直営店を出せば儲かるに違いない」と考えたことです。そして、ちゃんとした売り方をすれば売れると、日本でも日本橋高島屋の1階の一番いい場所などに出店し、価格もパリの価格の1.4倍で売ったことです。

 さらに、ハワイやグアム、香港では1.3倍程度で売った。パリで買うよりは高いけど、日本で買うよりちょっと安い。見事なプライシング(価格政策)を行って、一切値引きしないビジネスモデルをつくり、それが大当たりして現在に至っている。

 実はこれら一連の戦略を立案し、実行したのが、当時日本ルイ・ヴィトンのトップだった秦郷次郎氏だったのです。

 このルイ・ヴィトンが日本でやったことを日本企業の中国戦略に置き換えると、日本のメーカーが中国人の琴線を捉えて、かつ日本クオリティで展開したら、相当うまくいく可能性があるのではないかということです。そう考えると、「爆買い」は結構奥が深いのではないか。

 最終的にそうなるかはわかりませんが、中国で日本製品が買えるようになったら、わざわざ日本まで買いに来ることはなくなるでしょう。となると、爆買いの需要は消えてしまいます。しかし、日本の文化を見に来る人は出てくるでしょうね。

 ことほどさように、爆買いの奥にはさらなるビジネスチャンスがあるのです。

(構成/西川留美)