東京・中野といえば、マンガやフィギュアなどの“サブカルチャーの聖地”として有名だ。アニメ関連商品が集積する「中野ブロードウェイ」には日本全国のアニメファンのみならず、外国人観光客が連日どっと押し寄せている。
中野駅北口広場と中野ブロードウェイをつなぐ224メートルのアーケード商店街では、増え続ける中国人観光客の「爆買い」を商機と見込んだのか、ドラッグストアや飲食チェーン店が軒並み増えた。
地元の住民からすれば、狭い商圏に立地する5軒のドラッグストアは、明らかに「過剰」である。「このまま行けば、中野の商店街はドラッグストアと回転寿司の天下になるかもしれない」と危惧する住民は少なくない。
その一方で、昔ながらの老舗衣料品店が静かに姿を消し、なじみの街の靴屋や雑貨店も閉店した。競争に勝てなかったといえばそれまでだが、気がつけば中野から次々と地場の顔が消えている。
クルーズ船の爆買い客で
地元の商店は潤わない
中国に地理的にも近い、鹿児島県や沖縄県でも変化が始まっている。
2012年3月、鹿児島県の港「マリンポートかごしま」のそばに、東京に本社を置くドン・キホーテの宇宿店が開店した。このディスカウントストアがターゲットにするのは、大型クルーズ船で鹿児島を訪れる中国人観光客の爆買いだ。近年はイオンモールも店を構えた。
クルーズ船の寄港、そしてこの2つの大型ショッピングセンターの進出で地元も活性化すると思いきや、地元からは不満の声も上がる。鹿児島県在住の若手経営者のひとりは言う。
「インバウンド・ツーリズムで潤うのは所詮ナショナルチェーン、ナショナルブランドにすぎません」
クルーズ船で訪日する中国人観光客のお目当ては買い物。量販店はその「爆買い」に照準を合わせて出店攻勢をかけた。店内で扱うのは家電製品や日用消耗品などの売れ筋商品である。